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理事会での代理出席について

 マンション標準管理規約の見直し案が発表され、現在パブリックコメントを公募中ですが、
役員に関する第35条のコメント欄において、幾つかのコメント内容が新設されています。管理組合様にとって身近な問題に関することですので、その内容を見ていきたいと思います。

 まず、マンション標準管理規約の第35条(役員)は次のように規定されています。

(役員)
第35条 管理組合に次の役員を置く。
一 理事長
二 副理事長 ○名
三 会計担当理事 ○名
四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。
以下同じ。) ○名
五 監事 ○名
2 理事及び監事は、総会の決議によって、組合員のうちから選任し、又は解任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する。

 役員の担い手不足については、最初は、第35条関係において以下のコメントが新たに付け加えられることが提案されていましたが、第2回「令和7年マンション関係法改正等に伴うマンション標準管理規約の見直しに関する検討会」(以下、単に「検討会」という。」で、太字の箇所が削減されました。
④ 管理組合の役員の担い手不足に対応するため、組合員の家族又は親族を選任できることとするように当該要件を緩和することも考えられる。この場合、「区分所有者の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)及び○親等以内の親族に限る」や「○○マンションに現に居住する組合員の同居家族に限る」のように、選任できる家族又は親族の範囲を明確化することが必要である。

 そして削除された箇所に以下のコメントが追加されました。
「理事の負担感を軽減する観点 から、理事の家族又は親族が組合員の理事本人に代わって理事会に出席することを認めることも考えられる。詳細は第53条関係コメントを参照のこと。」

 その第53条関係のコメントに、以下のコメントが新設されます。
② 一方で、理事の負担感を軽減する観点から、理事が職務代行者を定め、理事本人が理事会に出席できない場合において、その職務代行者に理事会への出席(議決権の代理行使を含む。以下同じ。)を委ねることを認めることも考えられる。この場合、職務代行者の出席を認める旨及び職務代行者として選任可能な者の範囲を規約の明文の規定で定めることが必要である。また、あらかじめ、職務代行者に定める者を理事に選任される総会又は理事に 選任された後の最初の理事会で承認を得ることで、職務代行者も 含めた形で信任を得ることが考えられる。 職務代行者の出席を認める場合の規約の例は次のとおり。

<第53条の追加例:第6項から第8項>
6 理事は、職務代行者(理事の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)又は一親 等の親族 (理事が、組合員である法人の職務命令により理事となった者である場合は、法人が推挙する者)に限る。)を定め、理事会に出席させることができる。
7 理事は、職務代行者を理事会に出席させることが見込まれる場合は、総会における選任の時に、職務代行者を選任する旨を表明し、同意を得なければならない。
8 前2項の場合において、理事又は職務代行者は、理事が職務代行者を定めた旨及び職務代行者と理事の関係を証する書面を理事長に提出しなければならない。

 昨今、組合員だけで役員に就任していただくことが難しくなっており、既に配偶者や親族にも就任できるように規約の変更をされている管理組合様は多くいらっしゃいます。私も、規約の改正案の手伝いをさせていただいた時には、そのことを提案させていただいていますが、検討会では、次のような意見が出され、代理人とするのではなく代理出席の形をとる方が良いとコメントになり、上記太字箇所が削除されました。

【検討会での意見】
<管理組合役員の選任可能な者の範囲の見直しについて>
(委員)
・実際にあったケースなのだが、そのマンションでは、区分所有者の配偶者も役員に選任することができると書かれており、管理組合は知らなかったが、まだ一緒に住んでいるものの離婚している配偶者を理事に選任してしまった。その理事が横領して逮捕されたという話なのですが、このとき、横領した責任を区分所有者に帰させることができず、損害賠償請求もできなかった。なぜかといえば、善管注意義務違反をしたのは理事に選任された配偶者であって、選任されていない区分所有者は何の責任も負っていないからということになっていた。
・区分所有者が役員になるのが原則というのは、何か責任を追及すべき時に、損害賠償の担保としての区分所有権を有しているということが大きい。専門家として選任された役員であれば、専門家としての善管注意義務があり、業務実施に当たっての保険にも入っていたりもするので、区分所有権を持っていなくてもいいのだが。
・そのため、役員に選任するのはやはり区分所有者からということにして、代行を立てるような形にすると、その代行者の責任は、選ばれた区分所有者が負うということもできるかもしれない。区分所有者本人ではない家族・親族が選任される形にしてしまうと、その辺りの責任の問題が心配だ。
(委員)
・私も基本的に同意見で、代理という形でよいのではないかと思う。
・最高裁の判例で代理出席の範囲が問題になった事例があり、その判例によれば、病気などのやむを得ない場合のみ代理出席できるということが示されている。ただ、その判例によれば、理事は信任関係に基づく立場であるから代理人になじみづらいという理解を前提にしていると思われるが、時代の変化と、そもそも管理組合は会社ではないということ、また、そもそも区分所有者という立場に信任関係の基礎をどこまで置いているのかという論点もあるので、区分所有者の一定の範囲の親族等が代理出席していれば、信任の基礎は十分満たしているのではないかとも考えられる。そのため、むしろ代理人の範囲を広げるという形で対応するといいのではないかと思う。理事会も代理出席できるようにしてもらえないのかという相談はよく受けるので、代理出席を認めるという形でも、実務上のニーズは十分満たせるのではないかと思う。
(委員)
・この点について、実務上も、役員に選任できるというよりも、職務代行ができるというような書き方にしている。あくまでも役員の職務なので、役員自体は区分所有者にして、職務代行を家族、親族でもできるという書き方にしている場合が多い。

 以上のことから、この度のマンション標準管理規約改正案に準じて管理規約を改正される場合には、ご自身のマンションの実情に沿って、役員の就任についての規定を検討していただければと思います。

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