総会での委任状 ~委任の範囲について~
5月に通常総会(定期総会)を開催される管理組合様は多く、私がお手伝いをさせていただいている管理組合様でも、5月に通常総会を開催される管理組合様が幾つかあります。そのうちの一つの管理組合様の通常総会に、昨日出席させていただきました。
この管理組合様では、昨年、管理規約の改正案を総会に上程して承認されました。管理規約改正委員会を立ち上げて、約9か月間で管理規約の見直しを行いましたが、そのなかで議決権行使に関わる規定についてお話させていただきます。
ご存じの通り、総会の上程議案は理事会で決定します。上程されれば、特に普通決議の場合ですと、ほとんどが承認されます。議決権行使の方法には、会場に出席して賛否を投じるか、会場に出席できなければ議決権行使書で賛否を投じる、若しくは誰かに委任して賛否を投じてもらう方法がありますが、皆様も感じられているように、委任状の提出が非常に多く、そのほとんどが議長への委任です。100%に近いと言っても過言でもないと思います。ですから、理事会で決定した普通決議での上程議案は、100%近く承認されます。
管理規約改正委員会で管理規約を見直す際に、このことが問題視され、マンション標準管理規約の委任の範囲を変更して、以下のような案として上程し改正されました。
第46条(議決権)
5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
一 組合員と同居する配偶者
二 組合員の委任を受けた〇〇〇〇〇〇に現に居住する配偶者及び二親等内の成年親族
三 組合員が法人である場合、その法人の職務命令として受けた者
ちなみにマンション標準管理規約では次のように規定されています。
5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様 の事情にある者を含む。)又は一親等の親族
二 その組合員の住戸に同居する親族
三 他の組合員
つまり、委任の範囲から「他の組合員」を削除し、あくまで配偶者、親族に限定したのです。これで、議長への委任が出来なくなりました。そして、この規約の下で、今年の総会が昨日開催されたのです。
こちらの管理組合様は約100戸のマンションで、以前は40個前後の委任状が提出されていましたが、昨日の総会では、わずか5個(すべて配偶者の方への委任)しかありませんでした。その代わり、議決権行使書の提出が大幅(約15個から50個)に増加しました。この事は、誰かにお任せするのではなく、自分自身の考えで賛否を投じられた区分所有者が多くなったということです。
当初は、議決権行使書を提出するのが面倒と思われて、今まで委任状を提出されていた方が、委任状も提出できず、議決権行使書も提出しないという事態もありうるのではないかと危惧していましたが、良い方の結果を迎えることができました。
現在、区分所有法の改正案が国会で審議され衆院で可決され通過しました。あと参院を通過すれば法案が可決され、いよいよ、来年4月には施行されます。区分所有法の改正に伴い、マンション標準管理規約も改正されますので、管理組合様でも既存の管理規約を見直されると思います。その際に、一度、委任の範囲を検討されてはいかがでしょうか。