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機械式立体駐車場の安全対策の強化について

 昨年の暮れに、国土交通省都市局街路交通施設課長から、一般社団法人日本マンション管理士会連合会会長あてに、「機械式立体駐車場の安全対策の強化について」の協力要請がありました。
 以前、このコラム欄でも3回程ご紹介させていただきましたが、2016年(平成28年)9月に、製造者、利用者等各関係主体の機械式駐車装置の安全確保に係る取組の具体的な実践方法や実施上の留意事項を取りまとめた「『機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン』の手引き」が策定され、「管理者向け自己チェックシート」が作成されました。また、2017年(平成29年)5月には、JIS規格(機械式駐車設備の安全要求事項)も制定され、機械式駐車設備の安全確保のための環境整備が進められてきました。そして、さらに安全を確保するために、社会資本整備審議会「都市計画基本問題小委員会都市施設ワーキンググループ」で今後の取組について議論が重ねられ、昨年暮れに、機械式駐車装置安全対策サブワーキンググループにより、「機械式駐車装置の安全確保について とりまとめ」が発表されています。そのなかで、マンションに係る記述内容を少しだけ、お知らせしたいと思います。
 立体駐車場工業会が把握している、2007年(平成19年)6月から2017年(平成29年)3月までに発生した事故は少なくとも433件あり、そのうち重大事故(死亡及び重傷)は36件だそうです。そして重大事故の主な発生状況は、「装置内に人がいる状態で機械が作動」が約4割、「作動中の装置に侵入・接触」が約2割、「人の乗降・歩行時の転倒・落下」が約2割となっています。そして最も注目すべきことは、重大事故を発生した場所の約6割がマンションの駐車場だということです。
 自動車交通量の増大によって路上駐車が深刻化して、交通渋滞が大問題となった大都市での駐車場確保のために駐車場法が制定されましたが、この法律は、一定規模以上の路外駐車場のみが、技術的基準や機械式駐車装置の大臣認定制度の対象となっており、重大事故の約6割が発生しているマンションの駐車場についてはその対象となっていないのです。
 安全確保のために制定されたJIS規格では、外部から人が侵入できないようにするための外囲い(壁、フェンスなどの固定の構造物や必要な場合に設ける扉)の設置と、入出庫のために歩行する人の通路等で構成される乗降領域における人存在検知装置(人感センサー)の設置が求められていますが、このようなJIS規格を満たす機械式駐車装置を製造するかどうかは製造者に委ねられており、またそれを設置するかどうかも設置者に委ねられています。既存の駐車場にこれらの装置を設置するために改修するとなると、それなりの費用が発生するため、特に区分所有者の合意形成が必要とされるマンションでは、その改修が十分には進んでいないのが現状であると、この報告書には記載されています。
 そして今後の取組みとしては、設置者及び管理者の自主的な努力によるJIS規格を満たした機械式駐車装置の設置を促し、そのための公的支援も検討する必要があるとしています。

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