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「管理費等債権の優先化」と「管理費等債権放棄の明確化」

 区分所有法の改正を検討している法制審議会において、区分所有者の一般的義務を明確に規定しておく必要性があるとして、以下の条文を追加することを考えているとお話ししましたが、この考えは、NPO法人全国マンション管理組合連合会が4月11日に開催された第7回区分所有法制部会の場で、法務大臣官房参事官の大谷太氏(同部会幹事)に手渡した要望書にも含まれていました。また、弁護士等で構成されるマンション問題研究会からも同じ内容の意見書が出されています。

追加条文案
区分所有者は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を円滑に行うことができるよう、相互に協力しなければならない。

 ただし両団体とも、適正管理を努力義務にしてしまうと、法的義務でないから今までと同じように積極的に管理に関わらない恐れがあるため、「法的義務」として明記すべきことを要望しています。これは、マンションが社会的資産と捉えるならば、区分所有者は、社会的資産であるマンションの建物を適正に管理する義務を負うべきであるとの考えによるものです。
 また、両団体とも、「管理費等債権の優先化」と「管理費等債権放棄の明確化」についても要望しています。「管理費等債権の優先化」では、区分所有法第七条(先取特権)第2項の「前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす」を改正して、登記された抵当権者に優先させる立法が必要となります。これが立法されれば、銀行等の抵当権者より優先して管理費等の長期滞納金を回収することができるようになりますので、回収しやすくなります。「管理費等債権放棄の明確化」については、次のような条文案を、同七条第4項以下に追加するか、若しくは七条の2として立法化してはと提案されています。

第七条の2 規約もしくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権についての集会(普通)決議に基づき放棄することができる。
2 前項の決議について特別の利害関係を有する区分所有者は議決に加わることができない。
3 第1項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

 「管理費等債権の優先化」と「管理費等債権放棄の明確化」は多くの管理組合様で頭を抱えている喫緊の問題ですので、是非検討していただき改正案に反映して欲しいと思います。

 なお、NPO法人全国マンション管理組合連合会とマンション問題研究会が提出した要望及び意見内容は、以下の通りです。

<NPO法人全国マンション管理組合連合会の要望概要>
①区分所有者の適正管理義務について
・区分所有者相互間において区分所有者建物を適正に管理する義務を「法的義務」として負うことを中間試案に取り上げる
②第三者管理者の規制について
・法人化していない管理組合にも区分所有者以外の第三者が管理者になる場合には、監事を必置機関として監査機能を強化すべきことを中間試案に盛り込む
③「3条団体」名義での登記について
・法人化しなくても「権利能力なき社団」である管理組合のままで不動産登記ができる制度を検討することを中間試案までに取り上げる
④管理組合法人を非法人に戻す手続きについて
・管理組合法人時に行った集会決議などは「その後に存続する団体につき効力を生ずる」旨の規定を設けるべきことを中間試案に盛り込む
⑤管理費等債権の優先化について
・管理費等債権が抵当権の被担保債権に優先して回収されるという改正案を中間試案に取り上げる
⑥管理費等債権の放棄について
・中間試案に管理費等債権の免除を取り上げる
⑦1棟リノベーションの積極的検討について
・1棟リノベーションにかかる費用を調査し実効性についての情報を中間試案に反映させる
⑧区分所有建物の中心が「居住用」分譲マンションであることを重視した改正の必要性について
・管理組合の「目的」に関する議論を行うとともに、今後の議論の中で「目的」を狭く解する方向での議論については慎重に対応する

<マンション問題研究会の意見概要>
●管理費等債権の優先化
・管理費等債権(規約もしくは集会の決議に基づく債権)を担保する先取特権の順位について定めた区分所有法7条2項を改正するなどして、管理組合が有する管理費等債権の実体法上の優先順位を、登記された抵当者権に優先させるべきである
●管理費等債権放棄の明確化
・管理組合が管理費等を放棄することができること、およびその手続きについて立法化すべきである
●管理組合法人の理事等資格の明記
・管理組合法人の理事に法人がなれるとの解釈を法文上明らかにすべきである
・その方法として、現在、管理組合法人の理事の資格が定められていないことから、一般社団法人に準じて(一般社団法人法65条2項3項を除く)、理事の資格を規定すべきである
・また、持分会社の規定(法人が業務を執行する社員である場合の特則)に準じ、法人が理事となる場合には、当該法人は理事の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名および住所を他の理事らに通知する旨を定めるべきである(会社法598条1項参照)。監事についても、理事等と兼任できない他は、区分所有法に資格要件が定められておらず、同様に考えても差し支えないもと思われる
・なお、非法人の管理組合においては、区分所有法上、管理者方式を採用しているが、多くの管理組合において理事会方式を採用しているのであり、同様に、法人が理事等になることを許されると、解釈されるべきである(この点については、法改正は必要ではなく、管理組合法人の改正が当然に解釈に影響を及ぼすものと考えられる)
●区分所有者以外の者が管理者となる場合の監督制度について
・区分所有者以外の者が管理者となる場合、当該管理者の利益相反取引等を監督するための制度を検討するべきである
●管理組合による専有部分の取得について
・研究会報告書では、「法人格なき社団である区分所有者の団体(管理組合)または管理組合法人(以下「管理組合等」という)が区分所有権を取得することの可否に関する規律を設けることについて、管理組合等の目的との関係を踏まえつつ、引き続き検討すべきである」とされているところ、本改正に際しては、①管理組合等がその目的の範囲内で区分所有権を取得し得ることを明確化する立法を行うとともに、②管理組合等が区分所有権を取得する場合の手続きについて立法化すべきである
●区分所有者の「適正管理義務」を規定すべきこと
区分所有者が相互に適正管理を行うべき「義務」ではなく、法的義務として適正に管理すべき「義務」を規定すべきである

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