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出席者の多数決による決議を可能とする仕組み等


 初めに「出席者の多数決による決議を可能とする仕組み 」の内容についてお話させていただきます。

<仕組みその1>
 総会の決議の成立要件についてです。
 昨日の日本経済新聞の記事で説明させていただいたとおり、現行の区分所有法では「出席者の」とはなっていませんので、法制審議会の検討会では、次の総会の決議は、出席した区分所有者及び議決権の一定の多数で行うことができるように提案しています。
(ア) 普通決議
(イ) 共用部分の変更決議及び復旧決議
(ウ) 規約の設定・変更・廃止の決議及び管理組合法人の設立・解散の決議
(エ) 義務違反者に対する専有部分の使用禁止請求・区分所有権等の競売請求の決議及び専有部分の引渡し等の請求の決議

<仕組みその2>
 総会の招集通知の規定です。
 区分所有法第三十五条第1項を次のように改正することが提案されています。

区分所有法第三十五条(集会の招集)
集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項及びその議案の要領を示して、各区分所有者に発しなければならない。

 現行から“議案の要領”が追加されています。これにより、今まで“議案の要領”は、形状や効用の著しい変更を伴う共用部分の変更決議、管理規約の変更等決議、建物の大復旧決議、建物の建替え決議だけ必要でしたが、すべての議案に“議案の要領”を示す必要があることになります。これは、各区分所有者に事前に議案の内容を知ってもらうことで、総会への出欠、議案の賛否を決めるための内容検討をできるようにするためです。
 もし、総会において、議案の要領の範囲を外れた内容が決議された場合には、決議に瑕疵があるとして無効になる可能性があるため、総会で議論していくうちに、示された議案の要領の範囲を外れた内容の決議をしそうになった場合には、決議をせずにいったん総会を閉会して、改めて事案の要領を通知した上で招集手続を行い、総会の決議を経る必要があると検討会は考えています。
 また、専有部分の共有者の議決権行使についても、次のように改正することが提案されています。

区分所有法第四十条(議決権行使者の指定)
専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、民法第252条第1項及び第2項の規定により、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。会議の目的たる事項が建替え決議等の区分所有権の処分を伴う決議であるときも、同様とする。

 現行は、「専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者1人を定めなければならない。」です。民法第252条第3項では、共有者間の持分の価格の過半数による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない旨が規定されているため、この規定を適用しないことを提案しています。

 その他、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みを創設した場合、その際の総会成立の定足数をどうするかの問題があり、これについてはこれからも検討していくとのことです。

 次に、「共用部分の変更決議の多数決要件の緩和」についての検討内容をお話しします。共用部分の形状又は効用を著しく変更する場合の決議にはどれくらいの賛成が必要かという割合ですが、この割合を緩和することが検討されており、次のような案が提案されています。

【A案】基本的な割合を区分所有者及び議決権の各【3分の2】以上に変更した上で、次にある客観的事由がある場合には、区分所有者及び議決権の各【過半数】にする。
【B案】基本的な割合を今までどおり区分所有者及び議決権の各【4分の3】以上とした上で、客観的事由がある場合には、区分所有者及び議決権の各【3分の2】以上とする。

 割合を緩和すべきではないとの意見もかなりあったようですが、建替え決議の緩和要件とのバランスをとった提案にしているようです。そのため、客観的事由が付け加えられていると思われます。A案の方がはかなり緩和された割合となっています。客観的な事由がある場合にはさらに緩和するということですが、この客観的事由にも3つの案が提示されています。

<客観的事由>
【α案】次のア~エに該当する事由
区分所有建物が、
(ア) 火災に対する安全性に係る建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして政省令等によって定める基準に適合していない
(イ) 外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が剝離し、落下することによ り周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして政省令等によって定める基準に 該当する
(ウ)  給水、排水その他の配管設備の損傷、腐食その他の劣化により著しく衛生上 有害となるおそれがあるものとして政省令等によって定める基準に該当する
(エ ) 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律第14条第5項に規 定する建築物移動等円滑化基準に準ずるものとして政省令等によって定める基 準に適合していないと認められる場合とする。
【β案】
(オ ) 区分所有建物が、建築完了時から【30年】【40年】【50年】が経過した場合
【γ案】
区分所有建物が、アからエまでに加え、オの事由が認められる場合

 最後に、検討会では区分所有者の責務に関する規定についても触れられており、近年、「二つの老い」が進行し、所有者不明化・非居住化が進んでいる社会経済情勢を考えると、区分所有者の一般的義務を次のように明確に規定しておく必要性があると言っています、

追加条文案
区分所有者は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を円滑に行うことができるよう、相互に協力しなければならない。

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