マンション建替え 3分の2以上の合意へ引き下げ
政府が、規制緩和策を盛り込んだ都市再生特別措置法改正案を来年1月の通常国会に提出し、来年早々にこれを導入すると、本日の日本経済新聞に掲載されていました。
区分所有法や建替え円滑化法などの現行法では、建替えには区分所有者の「5分の4(8割)以上」の合意が必要ですが、建物の解体や敷地の売却を伴う建替えを行う場合には民法の原則が適用されるために、区分所有者全員の合意が必要です。そのために現状では、都市部の駅前再開発事業においては、全員の合意を得ることが非常に難しいのです。政府は都市再生法の改正で、市町村などの自治体が再開発事業と位置付けることを条件に、区分所有者の「3分の2以上」の合意で建替えできるようにすれば、再開発事業が促進できると考えています。再開発の際には、税優遇なども受けられる制度も拡充するようで、景気への波及効果が極めて高い民間の建設投資を促して、経済を成長させようとも考えているようです。
経年劣化のマンションが増えるにつれて、建替え需要は今後ますます拡大すると想定されており、もし「3分の2以上」の合意で建替えができれるようになれば、現状かかえている様々な課題が解決できるようになるでしょう。再開発でマンションを高層化できれば、空いた土地を有効利用できるようになり、不足している介護施設や保育所等を敷地内の商業施設に併設できるようになります。また、高度成長時代に建てられた階段室型低層住宅の大型団地マンションが建替えできれば、古臭い外観で時代に取り残されたようなマンションが、お洒落な外観で利便性の増したマンションに変貌して、若年層を呼び込めるようになり、今マンションにとって大きな問題の一つである住民の高齢化も緩和できることになります。しかし、このように喜ばしいことばかりではなく、「3分の2以上」に引き下げたために、新たな問題が起こりうる可能性もあります。
先日、ある駅前にある複合用途型のマンションの理事長さんから建替えについての相談を受け、現行の法律の範囲内で、建替えの難しさ等について説明させていただいたばかりでした。もし、今回の改正案が承認されて「3分の2以上」が適用されれば、等価交換方式で建築されて築30年になろうとしているそのマンションにとって、将来の建替えへの道に一筋の光明を見いだせることができるのではないかと、本日の日本経済新聞の記事を読んで思っています。