大規模修繕工事にかかわる国土交通省からの通知
国土交通省から、設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について次のような通知がなされましたので、お知らせいたします。
【通知内容】
設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について
~管理組合・区分所有者の皆様へ~
1.現状の課題
マンションの大規模修繕工事等において、診断、設計、工事監理を担う設計コンサルタントが技術資料を作成し、管理組合の意志決定をサポートする、いわゆる「設計監理方式」は、適切な情報を元に透明な形で施工会社の選定を進めていくためにも有効であるとされています。
しかしながら、別紙1の通り、発注者たる管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘されています。
2.課題解決に向けた取組の実現
平成28年3月に改正されたマンションの管理の適正化に関する指針においても、「二 マンションの管理の適正化の推進のために管理組合が留意すべき基本的事項」中「6 発注等の適正化」において、「工事の発注等については、利益相反等に注意して、適正に行われる必要がある」とされており、設計監理方式を採用する場合は、設計コンサルタントが利益相反行為を起こさない中立的な立場を保ち形で施工会社の選定が行われるよう注意する必要があります。そのような観点に留意した取組事例として、別紙2のような例も見受けられます。
今後、管理組合において大規模修繕工事等の実施に際し設計監理方式を採用する場合には、このような取組みを参考に、適切に行っていただくことが、マンションの管理の適正化を図っていく上で有効であると考えられます。
なお、建設労働省の社会保険への加入徹底については、建設工事の民間発注者にもご理解いただきながら官民を挙げた取組を進めているところです。既に国土交通省直轄工事については保険料の支払いに必要な法定福利費相当額を予定価格に反映させているところであり、マンションの大規模修繕工事等を発注する際には、法定福利費が内訳明示された見積書を参考に、法定福利費相当額を適切に含んだ額で請負契約を締結するようお願いいたします。
3.相談窓口の活用
マンションの大規模修繕工事等に関する、管理組合や区分所有者の皆様のご質問やご相談については、下記の相談窓口において、建築士等によるアドバイスを行っています。
設計コンサルタントを活用した設計監理方式を採用する際の留意点や参考となる取組事例の紹介等を行うこととしています。これらの相談窓口を有効活用しつつ、マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持向上にも資する大規模修繕工事等の実施に努めていただきたいと考えております。
<相談窓口>
○(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター
https://www.chord.or.jp/reform/consult.html
(電話番号)住まいるダイヤル・・・・・0570(016)100
※施工費用については「見積チェックサービス」(無料)も行っています。
○(公財)マンション管理センター
http://www.mankan.or.jp/06.consult/tel.html
(電話番号)建物・設備の維持管理のご相談・・・・03(3222)1519
別紙1 <指摘されている事例>
・最も安価な見積金額を提示したコンサルタントに業務を依頼したが、実際に調査診断・設計等を行っていたのは同コンサルタントの職員ではなく、施工会社の社員であったことが発覚した。コンサルタント(実際には施工会社の社員)の施工会社選定支援により同施工会社が内定していたが、発覚が契約前だったため、契約は見送られた。なお、同コンサルタントのパンフレットには技術者が多数所属していると書かれていたが、実質的には技術者でない社員と事務員一人だけの会社であった。
・設計会社が、施工会社の候補5社のうち特定の1社の見積金額が低くなるよう、同社にだけ少ない数量の工事内容を伝え、当該1社が施工会社として内定したが、契約前に当該事実が発覚したため、管理組合が同設計会社に説明を求めると、当該設計会社は業務の辞退を申し出た。このため、別の設計事務所と契約し直したところ、辞退した設計会社の作成した工事項目や仕様書に多数の問題点が発覚し、全ての書類を作り直すこととなった。
・一部のコンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が発注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、結果として、管理組合に経済的な損失を及ぼす事態が発生している。
別紙2 <取組事例>
○利益相反的な提案をしてきた設計会社を除外して選定した事例
・管理組合において、公開資料に記載の実績等を基に3社に見積りを依頼し、設計会社を決定。3社のうち2社は、設計費は安価だったものの、工事とセットでの契約が条件となっており、かえって高額になるため、選定されなかったもの。
管理組合において、新聞・雑誌・経験上の知識などの情報を基に15社に見積りを依頼し、うち7社から見積りが提出され、金額・内容・実績等を勘案し、上位2社に絞り込んだ。工事項目の絞り込みなど工事費の削減に向けた提案を行った施工会社を管理組合が決定。
○施工会社を公募など透明な形で募集し、理事会における投票・審議など公正な手続の下で決定した事例。
・設計会社は、公募及び紹介に基づく13社のうち、5社に関して管理組合の担当役員が個別面談を行い、予算超過であった最高値の会社と、設計業務を十分に行えないと考えられる額であった最安値の会社を除外し、3社に絞り込み、組合員で設計に詳しい者と相談しつつ、理事会の過半数賛成となるまで、理事会投票を数次重ね決定。
施工会社は、管理組合からゼネコン6社に提案を依頼し、書類審査により3社に絞り込み、理事会投票を数次重ね決定。
・設計会社は、管理組合において、従前から理事会のアドバイザーに就任していたマンション管理士の協力を得ながら、管理組合団体や他の管理組合からの紹介に基づき候補5社に選定し、提出された見積金額・実績・会社規模等を勘案して1社に絞り込み、定期総会で承認。
施工会社は、専門紙で公募し、5社に現場を案内した上で、見積金額・実績・工事内容・会社規模・アフターケアー等を勘案して管理組合の担当役員が1社に絞り込み、臨時総会で承認。