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今後の大規模修繕工事等の請負契約について(3)

 
 2020年4月に民法が改正されたことを受けて、マンション修繕工事請負契約約款も一部改正されていますので、これから大規模修繕工事の契約を予定されている管理組合様は、この改正された新しい約款であるかどうかを是非確認してください。今回の約款の改正に合わせて、名称の方も「旧四会」連合協定から「七会」連合協定に変更されています。
 民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会のホームページの解説によりますと、「旧四会」と「七会」とは以下の団体だそうです。
「旧四会」
建築學會(現在の一般社団法人 日本建築学会)
建築業協會(現在の一般社団法人 日本建設業連合会)
日本建築協會(現在の一般社団法人 日本建築協会)
日本建築士會(現在の公益社団法人 日本建築家協会)
「七会」
一般社団法人 日本建築学会
一般社団法人 日本建築協会
公益社団法人 日本建築家協会
一般社団法人 全国建設業協会
一般社団法人 日本建設業連合会
公益社団法人 日本建築士会連合会
一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会

 前回説明させていただきました第27条、第28条、第31条につきましては、第27条(工事の変更、工期の変更)では、以下の規定が追加されています。
(3)発注者は、工期を変更するときは、変更後の工期をこの工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間としてはならない。
第28条(請負代金額の変更)は変更されていません。そして、第31条(受注者の中止権)は、第30条(発注者の中止権、解除権)とともに、大幅に規定内容が追加されています。もう一つ、内容が大きく変更されたのが、第26条(瑕疵の担保)です。
 今回は、この第26条の変更内容を見ていきたいと思います。

 今年4月から施行された改正民法では、「瑕疵」という文言は使われなくなり、「契約の内容に適合しないもの」という文言に改められましたので、この第26条の項目名が「瑕疵の担保」から「契約不適合責任」に変更され、新たに第26条の2(契約不適合責任期間等)が追加されました。また内容につきましても、民法の改正内容に沿って以下のように変更されています。
*「瑕疵」の言葉は、「契約不適合」に変更された。
*請求できる内容が、従来の「修補」又は「修補+損害賠償」から、「修補」又は「代替物の引渡しによる履行の追完」に変更された。
*催告しても履行の追完がない場合には、「代金の減額」請求ができる。
*木造等の工作物又は地盤や石造、コンクリート造等の工作物といった材質の違いによる担保期間が民法上廃止されたため、原則、契約目的物の引渡しから2年となった。
*建築設備の機器本体、室内装飾、家具、植栽等については1年である。(ただし、引渡しの時の検査により発見できなかった「契約不適合」のみ)
*上記期間中に「契約不適合」の内容を受注者に通知すれば、通知から1年以内は請求できる。
*受注者の故意・過失による「契約不適合」の場合には、契約不適合の責任は民法が定めるところによる。

 従来の「瑕疵担保責任」は工事の隠れた欠陥に対する責任でしたが、今回の「契約不適合責任」では「契約によって期待される効果が得られなかった際に生じる責任」となります。例え口約束であっても発注者と受注者の間には「請負契約」が成立していると考えられますから、この請負契約の成果について「契約不適合責任」が問題となって来る可能性があり、「瑕疵担保責任」では欠陥のみであった責任の範囲が、請負契約の裏にある「発注者の期待」にまで、その範囲が拡大されることになりそうです。
 従いまして、請負契約約款の第26条は、不良施工があったときに適用される規定ですので、特に重要な条文です。これから契約を予定されている管理組合様は、約款の第26条の項目名が「瑕疵の担保」ではなく「契約不適合責任」であるかを必ずチェックして、もし「瑕疵の担保」でしたら、その約款は改正民法の内容を反映していない古い約款ですので、新しい約款に代えてもらうようにしてください。

 次回は、第30条と第31条、発注者及び受注者の中止権と解除権にかかわる規定を見ていきたいと思います。

今後の大規模修繕工事等の請負契約について(1)
今後の大規模修繕工事等の請負契約について(2)

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