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住宅団地の再生のあり方に関する検討会 「建築基準法第86条の一団地認定の変更・廃止手続き」について

 国土交通省は、平成27年7月から平成28年1月までに、「住宅団地の再生のあり方に関する検討会」を計8回開催しています。全国には、住宅団地が約5,000団地、約200万戸があり、その数字は全国の総ストック数の約3分の1で、また旧耐震基準のものは約1,600団地、約50万戸あります。東京や大阪で都市近郊に大量に建設されたこれらの住宅団地では、老朽化が進み居住環境が著しく低下しているため、上記検討会において住宅団地の再生のあり方について検討されてきました。その時にあげられた課題としては、1.ストックの老朽化と居住者の高齢化の同時進行、2.住宅団地の老朽化が周辺地域全体の活力低下へ波及するなど、まちづくりの面からも課題が表面化、3.区分所有法に基づく権利関係に伴う合意形成が困難、4.居住者の多様なニーズや立地特性からの必要性に対応可能な柔軟な事業手法の不存在、5.建築基準法第86条の一団地認定の変更・廃止手続きに当たり合意形成が困難、がありました。そして今後再生促進のために取り組むべき事項は、地域の拠点として再生を図る場合における市街地再開発事業適用の円滑化や、既存ストックの活用など立地特性に応じた柔軟な事業実施を可能とするための仕組みの整備、そして一団地認定の職権取消しが可能であることの明確化などとしています。
 
 5番目の課題である「建築基準法第86条の一団地認定の変更・廃止手続きに当たり合意形成が困難」ですが、この建築基準法第86条の一団地認定について少し説明したいと思います。「一団地認定」とは、一団地内に2つ以上の建築物を建築する場合に総合的な設計がされる場合には、複数の建築物を一の敷地とみなして、斜線制限等の建築基準法上の各種規定を適用できるようにする制度です。つまり、ひとつの建物では制限がかかってしまっていたのが、複数の建物を一つの団地と認定することにより、制限されなくなってしまうのです。それにより、バラバラの建物ではできなかったことが、一団地認定内の建物ではできるようになりました。
 しかし、今問題になってきているのは、この一団地認定を廃止するためには、建築基準法では土地所有者等の全員の申出(同意)が必要で、多くの区分所有者が存在している分譲の住宅団地においては、一団地認定の廃止が非常に困難であるということです。そのため、一括建替え決議の決議要件を満たしていても、一団地認定の廃止ができずに建替え事業が進まなくなることや、一団地認定の区域が複数の住宅団地にまたがっていた場合に、片方の住宅団地の建替え等のために一団地認定の区域を変更しようとしても、建替え等をしない住宅団地の権利者の理解を得ることが難しいなどの問題が出てきています。そこで、全員の申出(同意)がなくても、ある一定の場合には一団地認定の区域の変更・廃止を可能になるように検討を始めました。
 一団地認定については、全員の同意による取消しの申出があった場合には、特定行政庁はこれを取り消さなければならないのですが、認定後の事情により一団地認定を存続させることが妥当でないという状況が生じた場合には、特定行政庁は、全員の同意がなくとも、職権で取り消すことができるものとされています。 例えば、市街地再開発事業の施行等により一団地認定区域内の建築物が全て除却された場合は、認定の対象物が全て滅失しているので、一団地認定を存続させることは妥当でない状況であると考えられる場合や、また、一団地認定後に幹線道路の整備がなされ認定区域が分断されていれば、一団地認定の要件を満たさなくなっているので、一団地認定を存続させることが妥当でない状況であると考えられる場合などです。検討会では、このような場合については、建築基準法の条文にかかわらず、特定行政庁が一団地認定を職権で取り消すことができる旨を今後明確化すべきであるとしています。また、この他にも認定後の事情により一団地認定を存続させることが妥当でないと想定される状況をまとめて、周知を図るとしています。
 今後中期的に実現していくべき事項として、「より広範な住宅団地に適用可能となる柔軟な再生手法の実現」がありますが、これにつきましては、次のコラムで記述したいと思います。

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