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香港高層マンション火災の原因とは


 香港の高層マンションで26日の午後に大規模な火災が発生しました。28日の時点で、約130人の死亡者、約80人の負傷者、行方不明者は200人を超え、香港では過去70年以上で、最も死者が多い火災となりました。延べ140台以上の消防車と60台以上の救急車が出動し、消防士ら800人以上が投入されたようです。
 このマンションは、香港の中心部から約14キロ北の大埔地区にあり、1983年に建設された築42年の31階建て8棟の高経年マンションです。そして居住者の約4割が65歳以上ということです。ちなみに間取りは2LDKの40㎡で、価格は299万香港ドル(日本円で約6000万円)だそうです。
 このマンションでは、昨年7月から大規模修繕工事が実施され、建物全体に竹製の足場が組まれて、緑の防護ネットで覆われていました。これが、今回の火災が大規模になった要因となっているようです。
 まず、竹製の足場ですが、竹の足場は漢王朝時代から使われている古い建築技法で、今なお香港では、新築工事や改修工事の際の足場に広く使われているそうです。竹は柔軟性において重宝されていますが、可燃性であり、時間の経過とともに劣化しやすいということで、安全性や耐久性などの安全面で疑問視され、香港政府は今年3月以降に入札された公共の建築物の建築には、金属製足場の使用義務を発表していました。将来的には既存の建物の改修時にも適用されることになっていたと思いますが、その矢先での今回の大規模火災でした。ただし、この竹製足場は守るべき文化遺産であるとの意見を持つ住民も多いようです。

 そして、建物全体を覆っていた緑の防護ネットに耐火性能がなかったこと、そして可燃性が高い発泡スチロールで窓が覆われていたことで、最初の出火とみられる1棟の低層部分から急速に炎が広がり、隣の高層マンションにも燃え移ったようです。
 また、火災報知器が正常に作動していなかった(消防用の通路から建物に出入りする際に警報器が作動するのを防ぐために、警報システムを切っていた。)ようですし、作業員が竹の足場で喫煙する姿が複数の住民に目撃されていたということです。香港警察は、修繕工事の請負会社に「重大な怠慢」があったとして、幹部3人を過失致死の疑いで逮捕しています。
 今回の火災の要因には、全てではないですが、人的要因もあったと思われます。8年前に発生したロンドン西部の高層公営住宅のときもそうでしたが、この時は、大規模修繕工事の際に設置された外壁への断熱材・外装材に可燃性材料を使用したことで延焼が拡大しました。

 また、設置義務はないもののスプリンクラー設備が設置されていませんでした。香港の高層マンションにもスプリンクラー設備が設置されていなかったようです。ちなみに、日本では、消防法施行令第12条により、原則11階以上の高層階にはスプリンクラー設備の設置が義務付けられています。
 そして、避難経路が1つしか無かったことです。これも、香港の高層マンションには無かったようです。日本では、建築基準法施行令第121条で2方向避難(2つ以上の直通階段の設置)が義務付けられており、ご存じの通り、マンションのバルコニーは直通階段の代わりとして避難経路の1つとなっています。
 以上のように、大規模な火災になってしまった要因に人的要因が多く占められており、世界に類のない建築基準法及び消防法の基準が厳しい日本では、今回の香港や8年前のロンドンのような大規模な火災になることは無いと思われます。ただし、この厳しい基準が守られていること、火災報知器やスプリンクラー設備などの消防設備が正常に機能していることが前提です。
 12月は冬本番を迎える時期とあって、マンションでは消防訓練が実施される管理組合様は多いと思いますが、是非、積極的に参加していただき、消防設備を確認していただきたいと思います。また、1年に1回、必ず消防設備の機器点検と総合点検がそれぞれを実施することになっていますので、その際に指摘された不具合については速やかに是正していただきたいと思います。特に、生命に直結するような機器設備は、特にお願いします。あと一つ、バルコニーには避難の邪魔になる物は、決して置かないようにしてください。

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