東京都江東区の『マンション等の建設に関する条例』の改正
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が3月末に発表した2045年までの日本の地域別将来推計人口によりますと、2020年以降では沖縄県と東京都だけが人口増加でその他45道府県は減少するそうです。東京都の人口増加(主に23区)は、勿論出生による自然増加ではなく、他の自治体から流入による社会的増加です。その東京都23区で最も人口増加が顕著な区は江東区で、急激に増え続けています。理由としては、オフィス街である丸の内や大手町などが近いこと、総武線・京葉線・有楽町線・東西線・半蔵門線などの鉄道網があり交通アクセスが便利なこと、そして家賃相場が他の区と比べて低いことが挙げられます。その上、昔からの工場が郊外に移転した跡地が多くあり、そこにタワーマンションが次から次へと建設されました。
江東区での急激な人口増加は、ファミリー世帯の引っ越しによる小中学校の不足という問題を引き起こしましたので、区は2004年に一度、マンションの建設を抑えるために一定の制限を設けた条例を定めました。条例が功を奏して増加は鈍化したのですが、この条例が4年間の時限立法であったため、条例が失効した2007年からまた人口が急激に増え始め、東京オリンピックの開催決定がさらに加速させることになってしまいました。
高層マンションの建設ラッシュの大阪市でも、同じように小中学校の教室不足や待機児童の増加が大きな問題となってクローズアップされています。大阪市教育委員会は校舎の増築や特別教室の転用などで対応してきましたが、従来通りの方法ではとても不足分を確保できそうもないため、大阪市は市教委任せの方針を転換して、吉村洋文大阪市長をトップとする組織横断型のプロジェクトチームを立ち上げて、高層ビルの校舎建築や民間ビル借り入れなどを検討しています。 また、保育需要の増加に対応した保育施設等の整備を効率的かつ効果的に図るために、大規模マンションの建設計画が固まる前の段階で、大阪市と建設事業者(建築主)との間における保育施設等の整備に関する協議を義務付ける条例が制定され、平成30年4月1日から施行されています。
江東区では、保育所や小中学校の整備や調整といった対応がスムーズにできるようにマンションの建設を事前に届けてもらう条例(マンション建設計画の事前届出等に関する条例)を定めたり、待機児童問題を発生させないように151戸以上のマンションには原則的に保育所などを併設することを定めた条例(マンション等の建設に関する条例)も定め、大規模マンションによる人口の爆発的な増加への対策を講じています。今年の10月には、上記2番目の「マンション等の建設に関する条例」が改正されます。今回の改正は、人口増加を抑制させることではなく、単身者や3世代同居・近居といった多様な住生活環境の整備を図ることが目的で、ファミリー層向けの住戸ばかりが増えてしまったのを是正するためのようです
その主な改正点は、次のとおりです。
・生活利便施設又は地域貢献施設の設置
・緊急車両等を停留させるための自動車駐車場の設置
・障害者用自動車駐車場の設置
・90㎡以上の住戸を世帯用住戸数の10%以上設置
・25㎡以上40㎡未満の住戸を世帯用住戸数の20%以上設置
・バリアフリー住戸の設置