「マンションドクター火災保険」の適正化診断5000棟以上に
日新火災海上保険の「マンションドクター火災保険」が販売されてから約3年経ちましたが、その販売件数が発表されました。初年度の2015年度が194件、2016年度が768件、2017年度が1,588件で、年々販売実績が着実に伸びています。築年数別に見ますと、「築20年以上」が最多の83%ですので、この「マンションドクター火災保険」が意図していた当初の販売目的どおりの結果が現れているように思われます。たとえ高経年マンションであっても、マンション管理士による「マンション管理適正化診断」の結果で管理がしっかりと出来ていると判断されれば、他社と比較して保険料が安くなるというサービスでしたので、高経年マンションから数多く支持されたのでしょう。
「マンション管理適正化診断」は、管理運営全般について聞き取り調査や各種資料の確認を行って査定するのですが、過去に漏水事故があったのかどうか、今後漏水事故が起こる可能性があるのかどうかが、査定の一番のポイントとなり、漏水の可能性に係る項目の点数配分が多くなっています。漏水事故の可能性が低ければ、保険会社から見れば保険金が請求されないか、請求されても数は少なくなりますので、結果保険料を安くすることができます。そのため、ここ数年の契約伸び率は、日新火災海上保険が一番です。勿論、他の損害保険会社が指をくわえたままでいるわけにいきませんので、漏水事故等の管理状況による独自の保険料算出サービスの提供を始めだしました。
「マンションドクター火災保険」の保険料を算出するための、前記「マンション管理適正化診断」を実施できるのは、一般社団法人日本マンション管理会連合会に所属しているマンション管理士のみです。私もその一人で、この3年間で15組合(36棟)を診断しました。そこで、一つ気付いた点があります。先程記述したように、過去(3年間)に漏水事故があったのかどうかを調べるのですが、漏水事故の原因が、共用部分ではなく、圧倒的に専有部分の方が多いのです。しかもそのほとんどが、そのお宅の住民の不注意によるものです。火災保険の特約には、個人賠償責任保険があるのですが、この特約を付けたマンションでは、個人の不注意による水漏れに対して保険金を請求しているケースが非常に目立ちます。
本来、マンションの火災保険は共用部分の為に掛けているものであって、個人の不注意による賠償責任のために掛けるものではないと思われます。ほとんどの方は、個人賠償責任保険の特約を、自動車保険や個人の火災保険に付けられていますので、それを使えば済むのですが、その特約を付けておられない方が不注意で漏水事故を起こしてしまった場合に、階下の方への賠償で交渉が長引き拗れたりするので、良かれと思いマンションの火災保険に特約として付けています。今後、どの損害保険会社も漏水の事故歴で保険料を算出するようになりますと、個人の不注意の漏水事故の為に、マンションの火災保険の保険料が高くなってしまうことになりかねません。もし、現在の保険で個人賠償責任保険の特約を付けられているのでしたら、個人の不注意で漏水事故を起こさないよう、常日頃から住民の皆様に注意喚起をしていただきたいと思います。