マンションの大規模修繕工事における工事中の変動要素の取り扱いに関する調査結果
公益財団法人マンション管理センターから、「マンションの大規模修繕工事における工事中の変動要素の取り扱いに関する調査結果」が発表されましたので、お知らせします。これから大規模修繕工事実施の検討を始められる管理組合様、今まさしく工事計画概算費用を検討されている管理組合様は、是非参考にしていただければと思います。
大規模修繕工事では、足場が仮設してからでないと数量がわからない不確定要素があり、それに関わる金額は工事着手前では確定できません。従いまして、不確定要素をある程度想定したうえで、工事請負契約を締結することになります。今回の調査は、この不確定要素の取り扱いに関するものです。
調査は、2018年12月から2019年2月にかけて、東洋大学理工学部建築学科・秋山哲一研究室と(公財)マンション管理センターが協同して実施されました。205社の大規模修繕工事コンサルタントに対して行われ、有効回収は55社(回収率27%)でした。
まず初めに、工事請負契約で不確定要素の工事項目をどのように取り扱うかですが、次の2つがあります。
1つは、「実数精算方式」で、予め不確定要素の数量を想定して、それを暫定数量として工事金額を算出し工事請負契約金額を設定する方法です。この場合には、工事完了後に、実際の数量に基づいて精算します。実際の数量が暫定数量よりも多くなった場合には、管理組合様は施工会社にその分の追加工事費用を支払うことになります。反対に少なかった場合には、工事費用を減額してもらいます。
もう1つは、「責任数量方式」です。コンサルタントが不確定要素の工事項目の数量を設定して工事金額を確定し、実際の数量にかかわらず増減精算しない方法です。
調査では、「実数精算方式」が81%、「責任数量方式」が12%、その他7%と、圧倒的に「実数精算方式」が多い結果となっています。
次に、「実数精算方式」での暫定数量の設定方法で、調査結果は以下のとおりです。
・詳細調査から劣化数量を詳細に拾い出して設定 2社
・簡易調査から建物全体の劣化数量を拾い出して設定 35社
・サンプリングエリアの1㎡当たりの劣化数量を算出して設定 26社
・1住戸から数住戸の劣化数量から1住戸当たりの劣化数量を設定 15社
・過去の経験からの1㎡当たり単価を算定して設定 13社
・過去の経験からの戸当たり単価を算定して設定 12社
簡易調査から建物全体の劣化数量を拾い出して設定するのが一番多いようで、私がお手伝いをさせていただいた案件は、全てこの方法でした。
それでは、「実数精算方式」で最終的にどの工事項目で大きく変動したのか、また増減精算の状況をどうだったのかといいますと、暫定数量と精算数量に大きく乖離した工事項目は、「タイル補修」が一番で、次いで「躯体補修(ひび割れ補修)」「躯体補修(鉄筋発錆部補修)」「躯体補修(モルタル補修)」です。そして、精算状況につきましては、43.8%が追加精算、25.0%が同額精算で、減額清算は25.0%という結果でした。
その他の調査内容には、以下のものがあります。
・設計変更工事と追加工事
・変動要素に対する予備費
・予備費の執行手続き
・予備費と追加変更対応
・工事竣工後の工事金額の変動状況
詳細につきましては、(公財)マンション管理センターのホームページをご覧ください。