マンション一括受電に関する最高裁判決
今後のマンションの総会決議の効力について多大な影響を及ぼすと思われる最高裁の判決が、昨日3月5日に下されました。
札幌市厚別区にある544戸が入るマンションで、2015年に一括受電方式の導入が総会で決議されました。この一括受電を導入すれば、マンション全体の電気料金が安くなりますが、そのためには、各戸で個別契約するのではなく、全ての住民が同じ電力会社と契約しなければならず、現在の契約を解除して契約し直す必要があります。2016年の4月に電力の自由化が始まり、様々なサービスを提案する新電力会社が数多く出てくることが予想されていましたが、総会決議により、その自由選択肢が閉ざされてしまったことで、住民のお二人が契約解除を拒まれました。全員が契約解除して、新しい電力会社と契約しなければ、一括受電を導入することはできません。お一人でも反対されれば導入できないのです。
導入の方法によりますが、一括受電が導入できていれば共用部分の電気料金が安くなっていました。一括受電が導入された場合の1kw当たり23.4円と推計して算出した5ヵ月分の電気料金計3万1075円と、導入しなかった場合の通常電気料金4万240円の差額9165円(1戸当りですので544戸では約500万円)を、導入に賛成されていたお一人の方が反対されたお二人に求めて提訴しました。
札幌地裁の一審、札幌高裁の二審とも原告である賛成者の方が勝訴し、反対者のお二人への損害賠償請求が認められました。判決の要旨としては、「共用部分の変更および管理に関して集会決議で決めた以上、反対者も決議に従うのが区分所有建物の当然の理である。」、「低廉な電気料金の利益を享受できなかったとすれば、被告らは区分所有者または居住者の権利または利益を侵害したものとして、不法行為による損害賠償請求権に基づいて差額の電気料金を賠償すべきである。」というものでした。
これを受けて、反対者のお二人が上告し、昨日最高裁で判決が下されたのです。
結果は、一審・二審の判決が破棄され、賛成者の方の損害賠償請求を棄却いたしました。札幌地裁・高裁と最高裁の判断の違いは、総会決議が専有部分の使用に関する事項にも効力を有するかどうかの違いでした。最高裁の岡部喜代子裁判長は、「個々の住民の契約解除は専有部分の使用に関する事項であり、共用部分の管理や変更ではない。」、「総会決議は共有部分に関する事項を決定するものであって、個人の専有部分について効力を持つものではない。」としました。
住民同士の事柄を定めた規約の効力や範囲についての初めての判例となりますので、今後は、専有部分に関する規約の効力、総会決議の効力について見直されることになりそうです。
判決文はこちらをご覧ください。
平成30年(受)第234号 損害賠償等請求事件 平成31年3月5日 第三小法廷判決