マンション建替決議要件の緩和の記事について
昨年の年末に、マンション建替決議要件の緩和に向けて政府が検討を開始したとの記事が日本経済新聞に掲載されたことを、このトピックス欄(マンション建替決議要件の緩和に向けて政府が検討開始)でお知らせしましたが、この記事は、第206回国会(特別会)にて浜田聡参院議員から提出された質問主意書を受けて政府が答弁した内容と規制改革実施計画の内容をもとに、日本経済新聞社などの新聞各社が記事にしたものです。
質問主意書及びその答弁の概要は以下のとおりです。
一 老朽化等マンションの建替え等に対する容積率緩和特例の効果等について
①平成26年のマンションの建替え等の円滑化に関する法律(以下「マン建法」という。)の一部改正により導入された耐震性不足のマンションを対象とした容積率緩和特例の許可実績は、令和2年4月時点でわずか3件である。それ以降の実績は何件か。
<政府の答弁>
令和3年5月末時点で3件である。
②令和2年4月時点の実績(3件)を見る限りでは、容積率緩和特例の活用が進んでおらず、その要因は何か。また今後の見通しは。
③令和2年に要除去認定の対象が拡充されたが、新たに対象とされた類型による容積率緩和特例の活用の見通しは。
<政府の答弁>
広く合意形成を行った上で建替え等の方針を決定する必要があり、容積率の特例許可を受けるまでに一定の時間を要する。新たな要除却認定の基準については、制度の内容を広く周知することにより要除却認定の件数が増加するものと考えられる。
④要除去認定の対象となり得るマンションでも、斜線制限や日陰規制等の建築規制により、容積率緩和特例が活用できない場合がある。その実例を把握しているか。また、その影響を分析しているか。
<政府の答弁>
具体的に把握していないが、活用が限定されるマンションが存在する可能性があることは承知している。建替えにより新たに建築されるマンションは、原則として現行の建築規制に適合させる必要がある一方で、斜線制限については建築基準法の適用除外があり、日影規制については特定行政庁の許可による緩和が可能であること等から、容積率の特例許可を活用する際の容積率以外の建築規制による影響について、一概にお答えすることは困難である。
⑤これまでの実績を見ると、容積率緩和特例による建替え等の促進は見込めず、容積率緩和特例を活用することができないマンションの建替え促進施策を早期に導入すべきである。
<政府の答弁>
容積率の特例許可の対象拡大・マンション敷地売却制度の対象拡大や敷地分割制度を創設しており、既存の制度の周知に加え、これらの制度の活用を総合的に推進することにより、老朽化したマンションの建替え等を円滑化することとしている。
二 令和二年のマン建法一部改正で拡充された要除去認定の対象に係る要件の在り方等について
①容積緩和特例を受けるために、新たな対象となった外壁の剥落等や配管設備の劣化状況を放置する行為を誘発する懸念がある。「要除去認定基準に関する検討会(以下「検討会」という。)」での認定基準は、この懸念に十分対応したものであるのか。
<政府の答弁>
御指摘の故意に修繕を行わずに劣化状況を放置することを抑制する観点からも、改正後の「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」においては、管理組合がマンション管理適正化指針の定めるところに留意して、マンションを適正に管理するよう自ら努めることを、マンション管理適正化指針においては、長期修繕計画の作成や見直し等の必要性について記載し、適時適切な維持修繕を促すこととしている。
②バリア―フリー性能が確保されていないことで要除去認定を受けても、建て替え後のマンションにバリア―フリー基準を満たすことが建替えの要件となっていない。運用面で対応がなされるということであるが、具体的な運用面の対応とは何か。それでバリア―フリー基準を確実に満たすことができるのか。
<政府の答弁>
基本的にバリアフリー化を求めることとし、国土交通大臣が定める基準等を満たすことを、特定行政庁が確認できるようにすることを検討している。
三 老朽化等マンションの建替え等促進策の抜本的強化の必要性について
①韓国では、建替え決議や敷地売却決議は、区分所有者等の四分の三以上で足りるとされている。我が国でも、現在の五分の四以上を韓国並に緩和する必要があるのではないか。
<政府の答弁>
今後、老朽化したマンションが更に増加していくこと等を踏まえ、規制改革実施計画に基づき、建替え決議等の在り方について、要件の緩和等の方策も含めて検討していくこととしている。
②「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」には、建替えや除去などに必要な費用に関して記載されていない。老朽化マンションが大きな外部不経済をもたらすことを考えれば、修繕や除去に要する最低限の費用の積立てを法的に義務付けることは正当化される施策である。その導入に向けた検討を早急に行うべきである。
<政府の答弁>
管理組合がマンションを適正に管理するよう自ら努めるものとされており、マンション標準管理規約においても、修繕積立金の額は管理組合において自主的に決定されるべきものとしている。管理組合において適正な修繕積立金の額の設定及び積立てが促進されるよう、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を策定し、その周知徹底に努めているところであるが、御指摘の修繕や除却に要する資金の積立てについて、法的に義務付けることについては、慎重な検討が必要と考えている。
新聞で大きく取り上げられたのは、三の①(老朽化等マンションの建替え等促進策の抜本的強化の必要性について)で、その答弁の中での規制改革実施計画の内容は以下のとおりです。
【規制改革実施計画(令和二年七月十七日閣議決定)投資等分野】
(9)老朽化や被災した区分所有建物の再生の円滑化
A:今般のマンションの建替え等の円滑化に 関する法律(平成14年法律第78号)の改正に関し、除却の必要性に係る認定対象の具体的基準については、今般の法改正により老朽化したマンションの再生が円滑に進むよう、適切な基準とする。
B:今後老朽化したマンションが更に増加していくこと、相続により所有関係が複雑化していくこと、区分所有者が多様化・高齢化していくこと等も踏まえ、建替え決議において 集会に不参加の者(意思表示をしないもの)については、所有者不明である等、一定の要件・手続のもとで分母から除くこと、建替え決議に必要となる5分の4以上の賛成という要件の緩和、強行規定とされている同要件を任意規定とすること等の方策も含めて、建替え決議の在り方について、見直しによって得られる政策効果やマンションの管理に与える影響を踏まえるとともに、建替え決議による区分所有者への影響の重大性にも配慮しながら、法務省、国土交通省を中心とする 関係省庁等、法律実務家、研究者、都市計画の専門家、事業者等幅広い関係者を含めた検討の場を設けた上で検討する。
C:あわせて、今後大規模な災害が想定されていることも踏まえ、被災した区分所有建物の再建、取壊し等の決議に必要となる5分の4以上の賛成という要件の緩和、区分所有建物の一部が大規模滅失した場合の敷地の売却等についての決議可能な期間延長等も含めて、被災した区分所有建物の再建をより円滑に進める方策についても検討する
Aについては、国土交通省にて令和2年度に検討し、結論を得次第速やかに措置、B及びCについては、法務省と国土交通省にて、令和2年度に検討を開始して、できるだけ速やかに結論を得次第、措置することになっています。
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