民泊以外での専有部分の使用が問題に
今月の20日、大阪地裁である判決がありました。共同住宅において障害者の生活支援を目的としたグループホーム(GH)を営むことは、住宅以外の用途を禁じる管理規約に違反するとの判決です。
提訴された社会福祉法人は大阪市内のマンション(住宅251戸)内の2戸でGHを運営し、そのGHで40~70代の6人が生活しているとのことです。平成27年に改正された消防法施行令により、GHが入居するマンションでは定期点検の義務が発生し、将来的には防火設備の追加設置が必要となるかもしれないため、管理組合に多額の負担が生じる恐れがあるため、管理組合が提訴しました。
裁判長は、GHが障害者6人の「生活の本拠」と認めながらも、管理規約が想定する「住宅」には当たらないと判断し、GHの運営継続は「共同の利益に反する」と指摘したようです。
大阪府内のGHは、平成26年度調査では1245か所で、そのうちの約7割が公営住宅や分譲マンションなどの共同住宅に設置されているため、この判決により、他のGHの運営にかなりの影響を及ぼす可能性がでてきます。もちろん、今回の社会福祉法人は控訴する意向を示しています。
もう一つ、民泊以外で専有部分の使用が問題になっているのは、暴力団の組事務所として専有部分が使用されているケースです。
全国に広がった暴力団排除条例がきっかけで、今後増えるかもしれないと見られています。暴力団排除条例の施行により資金獲得が難しくなってきたことや、「特定危険」「特定抗争」に指定された暴力団への事務所の使用制限命令により、従来のビル型での事務所の維持管理が難しくなってきており、そのため、今後は周辺から見えにくい環境にあるマンションなどに組事務所を開設し組織を維持していくのではないかということです。
その実態把握はSNSの発達で組員同士のやり取りの巧妙化などにより難しくなっているとのことで、実際、組事務所として使用されていたマンションの住民に聞き取りしても、「暴力団員を見たことはない」「コロナ禍で住民の交流がなく分からない」という反応が大半だったそうです。
各都道府県の暴力追放運動推進センターが住民に代わって使用差し止めを求める「代理訴訟」というものがあるようですが、まずは、管理組合様が自力で、暴力団事務所がご自分のマンションに開設されないよう、まだ管理規約に暴力団の排除規定がないようでしたら規定し、普段から住民同士のコミュニケーションが密に図れるよう考えていただきたいと思います。
<マンション標準管理規約>