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大和ライフネクストのマンション管理適正化・再生推進事業報告の内容 その1

 マンションの管理適正化・再生推進に当たっての課題の解決に 向けた管理組合等の活動を後押しする取組みを支援することにより、成功事例・ノウハウの蓄積等を通じ、全国のマンションにおける共通の課題の解決 及び今後増大することが予想されている老朽化したマンションの課題解決の環境整備を図る目的で、国土交通省は毎年、マンション管理適正化・再生推進事業(マンシ ョンの新たな維持管理適正化・再生促進)を実施する事業者を公募しています。管理会社の大和ライフネクストが応募し、採択された「多数のマンションにおける維持管理適正化・再生促進の課題解決事例を収集・分析し、マニュアル等として全国に広く周知できるように取りまとを行う事業」の報告書の中に、興味深い内容がありましたので、数回に分けてご紹介したいと思います。

 今回は、震災ゴミの搬出作業についてと、住戸を隔てる「間仕切り壁」についてです。まず、震災ゴミの搬出についてですが、地震が発生して避難所や親戚等に一旦避難していたマンションの居住者が、マンションに戻った際に一番必要としたのが、「ゴミの回収」だったそうです。

 行政によるゴミの回収はありましたが、回収車不足と膨大なゴミの量のため、迅速な回収がされなかったようで、行政の指定する処理施設に搬入すればゴミを引き取ってくれたのことです。この処理施設へのゴミの搬入作業を行ったのが管理会社で、震災直後の管理会社の対応として最も評価されたそうです。報告書では、「水や食料の備えは災害への備えとして浸透しつつあるが、震災ゴミをどこに保管するのか、衛生面をどう維持するのかを検討している管理組合は少ない」と注意を促しています。なお管理会社がゴミを処理施設に搬入する際には、理事長の委任状を必要としたとのことです。

 次に「間仕切り壁」についてですが、被害が軽微だったマンションでこの壁を修繕する際に、「一休さんの頓智話」のような要望が区分所有者からあったそうです。通常、「間仕切り壁」は躯体(コンクリート)部分で、管理規約上では共用部分となっていますので、その修繕費用は管理組合が負担します。ただし、躯体に張られたボードと壁紙は専有部分ですので、この修繕費用は区分所有者の負担となります。今回の震災で「間仕切り壁」の躯体を修繕しようとしたときに、「頓智話」のような要望が出たそうです。専有部分の修繕費用を負担したくない区分所有者が「共用部分の躯体を修繕するのは構わない。しかし、クロスとボードはそのままでいいから剥がさないで工事をしてくれ」との要望を出したそうです。クロスとボードを剥がさないで、どのようにして躯体を修繕するというのですか。無茶苦茶な話ですよね。この「頓智話」のような要望があったため、報告書では次のように規約を変更してはどうかと提案しています。

≪提案規約例≫

●被害の調査のために、管理組合さまにて、立ち入り請求をします。

●外観調査の結果、クロスの毀損が躯体を原因とするものでないことが分かる場合は、当該クロス及びボードの修繕、交換費用は区分所有者さまの負担となります。

●外観調査では原因が不明の場合、クロスやボードを剥がして調査します。この場合、クロスおよびボードの原状回復費用は、管理組合の負担となります。

 つまり、躯体が原因でクロスやボードが毀損した場合には、その修繕費用を管理組合が負担する旨と、躯体調査のためにクロスやボードを剥がした場合のクロスとボードの原状回復費用を管理組合が負担する旨を規約に定めておくということです。

 この「間仕切り壁」では、もう一つ問題が発生したとのことです。20階以上の高層マンションの「間仕切り壁」 は、軽量化のためにコンクリートではなく石膏ボード等を使用した乾式壁が採用されていますが、ほとんどのマンションの管理規約では、「天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。」と規定されていますので、「乾式間仕切り壁」は躯体に該当せず専有部分であるから、この修繕費用は区分所有者が負担すべきであると、できるだけ管理組合の費用負担を軽くしたいと考えた役員の方が指摘したそうです。戸境壁を専有部分としてしまいますと、壁を自由に変更されてしまう可能性がありますので、「専有部分と専有部分を隔てる部分については『共用部分と類推できる』という解釈ができる」として、役員の方には説明したとのことです。今後も同じ問題が起こらないようにするためにも、「天井、床及び壁は、躯体部分(乾式耐火間仕切り壁を含む。)を除く部分を専有部分とする。」に規約を変更することも提案しています。

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