大和ライフネクストのマンション管理適正化・再生推進事業報告の内容 その2
大和ライフネクストの事業報告内容の2回目です。今回の熊本地震は、4月14日21時26分のマグニチュード6.5の前震と、28時間後の4月16日1時25分のマグニチュード7.3の本震の2つの大きな地震でした。地震保険法の第3条第4項には、「72時間以内に生じた二以上の地震等は、一括して1回の地震等とみなす。ただし、被災地域が全く重複しない場合は、この限りでない。」と規定されていますので、2つの大きな地震が発生しましたが、熊本地震は地震保険上では1回の地震とみなされました。今回の地震でこれが適用されたことが特徴の一つとして、報告書には挙げられています。そして報告書では、この2回の大きな地震で「全損」の認定を受けたマンションについて、問題提起を行っています。
建物が全損になったマンションが、費用の問題と解体業者不足のためにやむを得ず公費解体を選択しても、現在は順番待ち状態で、実際の解体までには相当期間がかかるのが現状のようです。この解体までの期間に生じるリスクの保険について問題提起をしています。解体までは建物自体は残っていますので、余震などで外壁タイル等が落下することが大いに考えられます。もし落下して通行人等の第三者に被害を与えてしまった場合、保険で補償されるのかどうかという問題があるというのです。
地震保険法の第2条第2項に「地震保険契約」の要件の一つとして「居住の用に供する建物又は生活用動産のみを保険の目的とすること。」とあります。つまり、居住者がいなくなった建物は保険対象外となる可能性があるという事です。また、人が住んでいても、全損判定を受けた建物は新たに地震保険に加入することはできません。ですから報告書では、全損の建物が無保険のままで放置されることにならないように、損害保険会社に対応を求めています。この件について損害保険会社に照会したところ、次のような回答があったとのことです。
≪質問≫「全損」の認定を受けて地震保険契約が終了しても、セットで加入している火災保険契約は同時に終了しないのか。
≪回答≫主契約が継続していれば賠償責任保険での補償は受けられる。ただし、地震による被害に起因する事故の場合は免責になる(保険金が支払われないこと)。
≪質問≫建物は「全損」の認定を受けているが、退去せずに居住している住戸のためにエレベーターのメンテナンス契約を継続するなどして、管理組合はその居住を認めている状態にある(退去の勧告などはしていない)が、この状態で、もし建物の外壁が落下して居住者や第三者に損害を与えた場合には、管理組合の加入する火災保険の補償の対象となるのか。
≪回答≫主契約が継続していれば、賠償責任保険の補償対象になる。ただし、この場合も外壁の落下が、震災以降に発生した地震(72時間以上経過後の余震)に起因する場合は、すでに地震保険は終了していることから免責となる。なお、居住者がいなくなった建物は保険対象の用途変更の通知が必要となり、実態によっては火災保険の解約となる場合もある。つまり、居住する人がいなくなった建物は「マンション保険:住宅火災保険」の対象とはならず、その建築物の倒壊などのリスクについては個別保険会社と引受について協議し、もし引き受ける会社があれば契約できる(ただしその場合相当の保険料が必要となる)。