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後を絶たないマンションでの子ども転落事故!!


 マンションのベランダから子供が転落する事故が後を絶ちません。先月は4件発生しています。

◎福岡県久留米市のマンション(6月8日)
4歳の女の子が18階の自宅ベランダから誤って転落し、マンションの1階にある店舗の屋根部分で死亡しているのが見つかりました。
事故当時は父親が母親を迎えに行くため外出しており、女の子は1歳の妹と2人で部屋に残っていました。
◎北海道札幌市のマンション(6月15日)
5歳の男の子が7階の自宅ベランダの柵を乗り越えて転落し死亡しました。ベランダの柵の高さは130㎝ほど。両親と3人暮らしで、事故当時は、両親が玄関の扉の鍵を閉めて買い物に出かけており、一人で留守番していました。
◎神奈川県横浜市のマンション(6月16日)
5歳の女の子が8階の自宅ベランダから転落し死亡しました。
ベランダの手すりは高さ約120㎝。5人暮らしで、当時は父と祖母が外出しており、自宅には母と0歳児の弟が在宅していたそうです。
◎神奈川県山北町のマンション(6月27日)
4歳の女の子が6階の自宅ベランダから転落しました。ベランダの物干しに足をかけて高さ125㎝の塀を乗り越えて転落したとみられており、女の子は搬送先の病院で死亡しました。女の子は両親と2歳の弟の4人暮らしで、事故当時は両親も在宅していたようです。

 この4件のマンションのベランダの柵や塀などの高さは、建築基準法施行令第126条第1項で定められている1.1m以上の高さがありました。福岡県久留米市のベランダの塀の高さはどの記事をみても高さが書かれていませんでしたが、おそらく110㎝以上はあると思います。ちなみに、この110㎝の高さは、昭和25年(1950年)に制定されてから今日まで、平均身長が10㎝以上も伸びているにもかかわらず一度も改正されていません。
 110㎝以上の高さがあるにもかかわらず何故事故が起きてしまったのか。よく言われています足掛かりとなるものが置かれていたのが1つの原因かもしれませんが、公益社団法人日本技術士会登録の「子どもの安全研究グループ」の調査研究報告内容を見てみますと、足掛かりがなくても、4歳ぐらいの子どもが110㎝の柵や壁をよじ登ることができるとしています。
 4歳児の平均身長は99cmですが、手を上方に伸ばすと120cmになりますので、床面から110cmの手摺りの上部(笠木という)にしっかり手を掛けて、手すり面や腰壁に足の裏を着ければ体を持ち上げることができます。腰壁につま先を引っかけることが出来るへこみがあれば更に容易になるというのです。
 また最近のマンションでは腰壁の上部に手摺りを設置してある場合が多いので、幼児は笠木に手を掛けやすくなり、腰壁をよじ登ると腰壁の水平部分が足がかりとなって簡単に体を持ち上げることができ、腰壁の水平部分に立って階下を覗き込んで結果転落という恐ろしいことが起きてしまいます。
 この研究報告から分かることは、手すり上端の床からの高さが110㎝以上あっても、身の軽い幼児は、腰壁に登る足がかりや手すりの天端(笠木)を乗り越えるときの足場となる足がかりがあればよじ登れるということです。また腰壁上の手すりの高さが90cmなければ、身軽な幼児は簡単によじ登ることができるということです。
 また、研究報告では、ベランダに置かれている足掛かりになる物の高さと、足掛かりになる物と柵や壁との安全な距離についても言及しています。
 研究報告によりますと、4歳児以上の幼児は65cmの台(箱)に全員登ることができ、5歳児以上だと70cmの台でも登れます。そして、台(箱)に登った幼児は50cm離れた柵を乗り越えることが出きます。身長が115cmの幼児であれば水平距離60cm離れていてもほとんどが柵を乗り越えることができます。
このことから、足掛かりになる物を柵や壁からある程度の距離で離しておくこと、もし距離が取れないのであれば、足掛かりにならない高さにするか置かないことです。
「子どもの安全研究グループ」の調査研究報告内容は以下をご覧ください。

  高層階からの転落事故

 子どもの転落事故をなくすための一番の方法は、やはり子どもがベランダに出られないようにすることです。施錠していたにもかかわらず子どもが自分で開錠したケースもあるようですので、単に施錠するだけでなく、子供の手が届かない位置に補助錠を取り付ける、一定以上窓が開かないよう固定するロックなどの安全グッズを使うことも検討してもらえればと思います。
 今回の4件で子どもを亡くされたご両親も、まさか「自分の子が」という想いで一杯でしょう。たぶん、このご両親の方々も、ベランダから子どもが転落して死亡した事故を一度はニュースで見たことがあると思います。その時は、自分の子はそうならないように気をつけなくては思ったはずです。しかし、わが身として起こってしまいました。
 マンションの管理組合でも、子どものベランダからの転落事故について十分注意してもらうように喚起を行っていたはずです。それでも起きてしまった。それでは、このような痛ましく悲しい事故をマンションで起こさないようにはどうしたらよいのでしょうか。人は、「喉元過ぎればなんとやら」ではないですが、注意喚起されたときは「うちの子が転落しないように」と気をつけますが、時が過ぎると、その認識も徐々に薄れてきます。そうならない為には、やはり注意喚起を何度も行うことが一番のように思えます。
 掲示板で注意喚起を行っても、見てはもらえないケースも考えられますので、掲示板の掲示とともに、できれば毎月、戸別配布することも考えられます。居住者名簿で家族構成は分かります(命を守るために名簿を使いますので個人情報の悪用にはならないと思います。)ので、幼児がおられるお宅には、理事会議事録や理事会ニュース、理事会たよりなどと一緒に配布していただければ、毎月見ていただけると思います。また、総会の案内状に同封することも考えられます。東京都消防庁の調べでは、0歳から5歳児の転落事故が最も多いのが、窓を開放することが多くなってくる6月です。新会計年度が3月から始まるマンションは多く、そのマンションの定期総会の開催は4月末から5月末にかけて開催されると思いますので、その案内状に注意喚起のチラシ(資料が多いので目につく工夫が必要)を同封するには、一番良いタイミングではないでしょうか。是非、一度ご検討いただければと思います。

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