新電力会社が既存電力会社に売却
一昨年の電力小売り全面自由化により、分譲マンションでの「高圧一括受電」による電力販売競争が激しくなりましたが、先月、長谷工コーポレーションがマンション向け電力事業を手掛ける子会社の長谷工アネシス(東京都港区)を関西電力の子会社である「Next Power」に譲渡することを発表しました。今回譲渡されるのは、マンションで展開される長谷工エネシスの高圧一括受電・共用部電力小売りサービス事業で、発電事業者から割安な高圧電力をまとめて調達し、低圧電力に変換して各住戸に供給するため、各住戸が個別に契約するよりも安くなるサービス事業です。
長谷工エネシスは中央電力(関電系)に次ぐ業界第2位で、供給戸数は約9万2千戸、首都圏でのシェアーは約60%ですが、2011年以降の新築マンションにおいては約16%のシェアーで第1位です。東京電力ホールディングスも関心を示していましたが、最終的には、関西電力が約229億円で譲り受けることになりました。契約の効力は、本年7月1日から発生する予定とのことです。関西電力は、昨年の9月にもオリックス電力が行うマンション高圧一括受電サービス事業を譲り受けおり、この際に設立した子会社が上記の「Next Power」です。
2016年4月から電力小売り全面自由化になり、当初400社近い企業が一斉に参入しましたが、経済産業省によりますと、自由化から8ヶ月後の2016年末の段階で、電力供給実績がゼロの企業が約2割ということです。そして、その企業の約3割が登録しただけで事業を行っていないそうです。実績ある企業でも、月間販売電力量が少なく過ぎて、電力調達費用・託送費用・システム償却費用などが賄うことができずに赤字だそうです。
大手の長谷工エアネスやオリックス電力が売却されはじめたことを考えますと、今後ますます再編が加速する可能性があります。しかし、今回のように、売却先が関西電力のような既存の電力会社であれば、既存電力会社が新電力会社を飲み込む形となってしまい、「自由化」が形骸化してしまう恐れが出てきました。