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機械式立体駐車場で、自動車を乗せたままのパレット落下事故が多発


 約2年ほど前に、マンションの機械式立体駐車場で自動車を乗せたままパレットが落下した事故が相次いでおり、原因は機器の経年劣化と見られています。車ごと落下した事故が発生したのは3件のマンションで、調査の要望を受けた消費者庁の消費者安全調査委員会は、その事故原因を詳細に分析し、国土交通省に対応を求めました。

 3件の事故内容ですが、
 1件目の事故概要は、使用者が地下1段のパレットに駐車している自動車を出庫するための操作を行ったところ、パレットの上昇中に地上1段パレットが突然後方に傾き、自動車が後部から地下1段まで落下して損傷したというものです。
 2件目の事項概要は、使用者が地上4階のパレットに駐車している自動車を出庫するための操作を行ったところ、パレットが地上3段の高さまで降下した時に異常音が発生して、その直後にパレットが地上階まで垂直に落下し自動車が損傷したというものです。
 最後の3件目は、使用者が地下1段のパレットに駐車している自動車を出庫するために操作を行い、パレットが地上面で停止した後に自動車に乗車した。そしてドアを閉めようとしたところ、ドアが歩廊に接触して閉まらなかったため、一旦降車したが、その直後に、パレットと自動車が徐々に降下し、30~45㎝降下したところで停止。傘を使って社外から荷物を取りだそうとしたができず、再度自動車に乗り込むと、その直後に自動車がパレットとともに地下2段まで落下し、自らも負傷、自動車も損傷したというものでした。

 事故の原因ですが、詳細な原因調査が行われていないため、あくまで推定原因として、消費者安全調査委員会は次のように発表しています。

<1件目の事例:2018年9月発生(2003年7月設置)>
【昇降運搬装置ワイヤロープの破断】  
製造者が推奨する定期交換対象品であるワイヤロープを長期間使用したことによる経年劣化が原因で破断したと推定する。

<2件目の事例:2018年12月発生(2007年9月設置)>
【電動装置モータの軸及び歯車破損】  
製造者が推奨する定期交換対象品であるインバータを長期間使用したことによる出力の低下に起因して、電動装置モータに異常な負荷が掛かったため、同モータの軸歯車が破損したと推定する。

<3件目の事例:2019年発生(2004年6月設置)>
【電動装置モータのブレーキ機能不良】  
製造者が推奨する定期交換対象品である電動装置モータを長期間使用したことによる同モータ内部部品(オイルシール)の経年劣化に起因して、同モータギヤボックス 内のギヤ―グリースが同モータブレーキディスクに付着し、ブレーキ機能が不良となったと推定する。

 3件とも、保守点検業者から経年劣化による交換を推奨されていましたが、事故直前の定期点検では異常はなかったため、交換していませんでした。経年劣化による不具合の発生が生命身体事故につながる危険性が高いことの認識が管理組合様に不足していたこと、また製造者がその危険性を所有者である管理組合様や保守点検事業者に周知していなかったことを、消費者安全調査委員会は1つの要因としています。
 機械式駐車場での事故が多発していることで、国土交通省は2018年7月に、所有者と保守点検事業者と製造者の役割や機械式駐車設備の適切な維持管理のためになすべき事項を盛り込んだ「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」を作成していますが、今回の事故発生のマンションの2件では、保守点検事業者はこの指針を認知しておらず、また管理組合様も製造者が作成した保全計画書(長期整備計画書)を保有していなかったことが分かりました。
 そのため、消費者安全調査委員会は2月18日に、今後このような事故が再発しないための以下の防止策を国土交通大臣あてに提出しました。

(1)定期交換を推奨する機器及び部品(以下「機器等」という。)のうち、経年劣化による不具合の発生が生命身体事故につながる危険性が高いと製造者が判定するものについては、製造者から所有者並びに管理事業者及び保守点検事業者にリスクを周知し、機器等の交換を促進するよう、製造者による対応を求めるべきである。
(2)標準保守点検項目のうち、不具合の発生が生命身体事故の要因となることが製造者において想定される装置については、機器等の劣化状況を所有者に示すことにより、交換を促進できるような点検項目に見直すべきである。
以下に標準保守点検項目の見直し例を挙げる。
①電動装置のブレーキ機能については、現在の動作確認に加え当該機構部品への直接的な点検(測定等)を追加すること。
②制御装置のシーケンサ及びインバータの機能点検については、点検項目を明示すること。
(3)保全計画書に基づき設備ごとの設計耐用年数及び保全計画を所有者等に説明及び提出するよう、製造者又は保守点検事業者による対応を求めるべきである。
(4)国土交通省が作成した「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」は、所有者及び管理事業者から製造者への設備の適切な維持管理に係る問い合わせに対応する仕組みを製造者において整備することとしており、この仕組みを、引き続き、所有者及び管理事業者のほか、保守点検の専門事業者にも周知する必要がある。その方法のひとつとして、同指針に記載された「保守点検契約に盛り込むべき事項のチェックリスト」を見直すべきである。

 理事会において、管理会社から機械式駐車場の保守点検結果が報告され、その際に経年劣化による交換が推奨されことがよくあることですが、交換しないことによる事故発生、特に生命身体に関わる事故発生の危険性を念頭に置きながら、今後は交換実施の有無を検討していただきたいと思います。そのためにも、管理組合様の判断知識が必要ですので、管理会社は、ただ点検結果を報告し交換推奨するだけでなく、交換しなかった場合のリスクを保守点検事業者からしっかりと説明をうけたうえで、管理組合様に報告していただきたいと思います。また、管理組合様は保全計画書の有無を確認してください。無い場合には、製造業者に確認できれば製造業者に、確認できなければ保守点検事業者に新たに作成してもらって下さい。
 先程の「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」には、点検周期の目安が掲載されていますので、ご自分のマンションの保守点検事業者との契約内容をご覧いただき、この目安と比較してみてください。

 「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」
  点検周期の目安

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