今後の大規模修繕工事等の請負契約について(1)
新型コロナウイルス感染問題は、マンションの管理組合に様々な影響を与え、また検討課題を残したように思います。
先日、大規模修繕工事が中断した場合の費用負担についてのご相談がありました。中断したために発生する費用の増額分を施工業者が負担してくれるのか、それとも管理組合が負担しなければならないのか。実際に中断したのではなく、これから大規模修繕工事を実施する予定のようで、もし新型コロナウイルスの第二次感染が始まって工事が中断した場合を危惧されてのご相談でした。
4月8日に国土交通省土地・建設産業局建設業課長から民間発注者団体の長あてに「新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言を踏まえた工事及び業務の対応について」の事務連絡が送付されています。その資料の中の「1.施工中の工事等における新型コロナウイルス感染症に係る一時中止措置等の対応について」には、以下のように記載されています。
「緊急事態措置を実施すべき区域(以下「対象地域」といい、今後、追加される区域を含む。)における工事等については、対象地域に係る都道府県知事からの要請 を踏まえ、受注者からの申出があった場合には、受発注者間で協議を行った上で、 工期の見直しやこれに伴い必要となる請負代金額の変更、一時中止の対応等、適切な措置を行うようお願いします。また、対象地域外における工事等についても、新型コロナウイルス感染症の罹患や学校の臨時休業等の感染拡大防止措置に伴い技術者等が確保できない場合、また、これらにより資機材等が調達できないなどの事情で現場の施工を継続することが困難となった場合の他、受注者から一時中止等の申出があった場合においては、一時中止等を希望する期間のほか、受注者の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に向けた取組状況、地方公共団体からの活動自粛要請等の事情を個別に確認した上で、必要があると認められるときは、工期の見直し及びこれに伴い必要となる請負代金額の変更、一時中止の対応等、適切な措置を行うようお願いします。
なお、これらの場合においては、特段の事情がない限り、受注者の責によらない 事由によるものとして取り扱われるべきものと解されますので、宜しくお取り計らいください。」
最後に書かれてあるところがポイントで、新型コロナウイルス感染による工期の見直し及びこれに伴い必要となる請負代金額の変更は、「受注者の責によらない事由によるもの」として取り扱われるべきものであると解釈できると言っています。つまり受注者である施工会社に増額分を負担させることはできないということです。しかし、工期の見直しや請負代金額の変更は、受発注者間で協議を行った上で適切な措置を行って下さいとも言っていますので、まずは、受発注者間の協議が大前提です。
この事務連絡内容は、既に実施されている工事に対して送付されたものですので、今後実施する工事に関しては、今回の新型コロナウイルス感染のような非常事態が発生した場合の増額費用の負担について必ず協議したうえで、工事請負契約を締結していただきたいと思います。
大規模修繕工事の時に締結される工事請負契約書と約款は、ほとんどが、民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款委員会が平成28年4月に作成した「マンション修繕工事請負契約書」と「マンション修繕工事請負契約約款」をもとに作成されています。それ以前は、マンションの修繕に特化したものではない「工事請負契約書」と「工事請負契約約款」をもとにして作成されていましたので、未だに「工事請負契約約款」を利用されている業者がありましたら、「マンション修繕工事請負契約約款」をもとに作成し直してもらうように言って下さい。
これから大規模修繕工事の請負契約を締結するにあたって、是非、施工会社と協議していただきたい内容等については、次回お知らせしたいと思います。