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今後の大規模修繕工事等の請負契約について(2)

 今回のような新型コロナウイルス感染のような予期せぬ出来事が発生した場合に備えて、今後の大規模修繕工事等の請負契約で協議しておく必要があると思われる内容を考えてみたいと思います。
 前回書かせていただいたように、マンションの大規模修繕工事の時に締結される工事請負契約書と約款は、ほとんどが、民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款委員会が平成28年4月(2020年4月改正)に作成した「マンション修繕工事請負契約書」と「マンション修繕工事請負契約約款」をもとに作成されています。
 その「マンション修繕工事請負契約書」には以下の項目が記載されています。
1. 工事場所
2. 工期
3. 請負代金額
4. 請負代金の支払
5. 監理業務等の委託先の有無
6. 部分引渡しの有無
7. 工事完成証の有無
8. 大規模修繕工事瑕疵担保責任保険の有無
9. 契約上引渡すべき図書
10. その他(特記事項等があればこの欄に記入する)
 次に、「マンション修繕工事請負契約約款」は34条から構成されており、その中で、予期せぬ出来事が発生した場合に備えて注意すべき条文は以下の条文と思われます。
第27条(工事の変更、工期の変更)
第28条(請負代金額の変更)

 まず初めに第27条について見ていきたいと思います。
第27条(3)には、
「受注者は、発注者に対して、工事内容の変更(施工方法等を含む)及び当該変更に伴う請負代金の増減額を提案することができる。この場合、発注者は書面による承諾により、工事内容を変更することができる。」
と記載されています。
また、(5)には、
「受注者は、この契約に別段の定めのあるほか、工事の追加又は変更、不可抗力、関連工事の調整、その他正当な理由があるときは、発注者に対してその理由を明示して必要と認められる工期の延長を請求することができる。」
とあります。
 工事期間中には、施工業者が管理組合様のために、計画にはない工事の追加を提案することや、逆に工事の必要性がないことや仕様の変更を提案することは多々ありますので、(3)は問題ありません。しかし(5)の方は、少し吟味しておく必要があります。
 工事の追加又は変更、不可抗力、関連工事の調整、その他正当な理由があるときには、工期の延長を請求することができ、そしてもう一つ、「別段の定め」がある場合にも工期の延長を請求することができるとなっています。そこで、この「別段の定め」が何かですが、予期せぬ出来事が発生した場合に限定しますと、第15条には以下のような内容が別に定められています。
第15条(設計、施工条件の疑義、相違など)
 施工の支障となる予期することのできない事態が発生した場合には、施工業者は速やかに書面をもって管理組合様に通知しなければならず、通知を受けた管理組合様はただちに書面をもって施工業者に指示することになっており、その際に、修繕工事の内容、工期、請負代金額を変更する必要があると認められるときには、管理組合様と施工業者が協議することになっています。
次に第28条を見てみます。

 第28条(1)には、施工業者が、管理組合様に請負代金額の変更を求めることができる場合が記載されています。そのうちの一つに「中止した工事又は災害を受けた工事を続行する場合、請負代金額が明らかに適当でないと認められるとき。」とあります。そして、請負代金額が減少する場合は契約時の内訳書の単価で計算しますが、増額する場合には変更時の単価で計算するとなっていますので、請負代金額の増額は契約時の単価で計算されたものよりも多くなると思われます。
 予期することのできない事態が発生して工事が中止された場合、当然工期が伸びることになりますので、請負代金額が増額します。大規模修繕工事の請負代金額が増額される要因で特に大きなものは、人件費と足場などの仮設費用です。人件費は主に現場代理人の費用です。工期が伸びれば現場代理人の拘束日数が増えますので当然その費用が増えます。そこで、管理組合様と施工業者とで事前に協議してもらいたいことは、どの程度の工期延長であれば管理組合様が請負代金額の増額を受け入れられるかです。1~2週間程度の延期であれば、増額請求されることはないと思われますが、1ヶ月以上の延期になると増額請求すると言う施工業者が多いです。それでは3週間の延期はどうなるのか。この判断基準の日数が、約款にも契約書にも記載されていません。「協議」と言う言葉で曖昧にされています。そこで、この「協議」を契約前にしておくのか、または工事期間中に事が起きてから行うのか。それぞれ一長一短がありますので、是非考えておいていただければと思います。
 次に仮設費用の中で足場代ですが、これも工事が延長されれば足場のリース期間が延びてしまいますので、その分リース代がかかってしまいます。これも、増額となる延長日数の判断基準が必要となります。ただし、予期することのできない事態が足場の仮設前に発生した場合には、工事が再開されてから足場を仮設すればよいだけで増額にはならないと思いますので、この場合は考えなくて良いでしょう。
 ちなみに、第31条には、遅延又は中止期間が契約工期の1/4以上か2カ月以上になったときには、施工業者は書面をもって解除通知できることが規定されていますので、ご注意ください。

 以上、約款の第27条と第28条からも、予期することのできない事態で、つまり不可抗力により工事が延期されれば、施工業者に責任はないものとし、その分の増額費用の負担割合を、管理組合様と施工業者と「協議」して決めることになります。その「協議」を契約前に行うのであれば、契約書に記載してもらってください。約款は、不特定多数の管理組合様に対応できるために定型的に定められた条項ですので、「協議」して決めたことは契約書で追記してもらうことになります。追記する場所は、冒頭に書いた「マンション修繕工事請負契約書」の10. その他(特記事項等があればこの欄に記入する)の項目です。
 これから秋工事で実施される予定の管理組合様は、新型コロナウイルス感染も完全に終息してはいませんし、台風やゲリラ豪雨のような予期することができない事態が発生して工事が延期される場合がありますので、是非、施工業者と事前協議していただきたいと思います。

 今後の大規模修繕工事等の請負契約について(1)

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