管理不全マンションは増加するばかり
毎日新聞の配信ニュースによりますと、毎日新聞が9月に、都道府県や人口20万人以上の市区など計178自治体にアンケートしたところ、過去5年間で49自治体が分譲マンションの実態を独自に調査し、管理組合すらないマンションが少なくとも671棟に上ることが分かったそうです。特に東京都が突出して512棟、次に北九州市が38棟、そして千葉県が21棟と続いています。また、管理費を徴収していないマンションも、東京都で243棟、熊本市で30棟など、8自治体で283棟あり、修繕積立金を未徴収のマンションも21自治体で720棟あり、東京都で417棟、北九州市で96棟、北海道で61棟があったそうです。
国の推計では、管理組合がないと確認されたのは200棟に1棟の割合だそうですが、自治体が実施するアンケート調査さえ応じない問題を抱えているマンションは相当数あり、管理組合がない割合はもっと増えるとのことで、建物の老朽化とともに「管理不全マンション」が今後ますます増え続けるは間違いありません。
このような管理不全のマンションの実態をつかむために、以前東京都が2011~12年に、都内の約5万3000棟の管理実態を調べたところ、約500棟に管理組合がなかったようで、調査に応じたのが全体の17%という事を考えれば、管理不全物件はさらに多くなるということでした。東京都以外でも、大阪市や京都市は現地訪問して調査しています。大阪市では2012~2013年に築30年以上の約340棟のマンションを対象に、理事長との代表者から直接問題点などを聞き取り、外観の目視点検を行っており、また京都市では、現地訪問した際に回収した調査票や目視調査から「要支援マンション」を選んで、マンション管理士や1級建築士などの専門家を派遣することで管理組合を支援しています。
このような「管理不全マンション」が将来増え続けることが予想されたために、国は2000年にマンション管理適正化法(正式名は「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」という。)を制定しました。その際に林寛子初代国土交通大臣(女優の扇千景さん)が「マンションの管理の適正化に関する指針」を発表しており、その序文には次のように記載されています。
「我が国におけるマンションは、土地利用の高度化の進展に伴い、職住近接という利便性や住空間の有効活用という機能性に対する積極的な評価、マンションの建設・購入に対する融資制度や税制の整備を背景に、都市部を中心に持家として定着し、重要な居住形態となっている。
その一方で、一つの建物を多くの人が区分して所有するマンションは、各区分所有者等の共同生活に対する意識の相違、多様な価値観を持った区分所有者間の意思決定の難しさ、利用形態の混在による権利・利用関係の複雑さ、建物構造上の技術的判断の難しさなど、建物を維持管理していく上で、多くの課題を有している。
特に、今後、建築後相当の年数を経たマンションが、急激に増大していくものと見込まれることから、これらに対して適切な修繕がなされないままに放置されると、老朽化したマンションは、区分所有者自らの居住環境の低下のみならず、ひいては周辺の住環境や都市環境の低下など、深刻な問題を引き起こす可能性がある。
このような状況の中で、我が国における国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与するためには、管理組合によるマンションの適正な管理が行われることが重要である。」
マンション管理適正化法では、管理業者に国土交通省への登録を義務付け、住民の相談に乗る国家資格「マンション管理士」を新設し、マンションの居住環境を守るためのインフラ整備を行いましたが、「管理不全マンション」の是正の道のりはまだまだ遠いようです。今度の日曜日に、平成28年度のマンション管理士試験が実施されますが、受験者数は年々減ってきています。今後ますます「管理不全マンション」が増えることを考えると、実働のマンション管理士を多く輩出することが急務と思われるのですが、受験者数が減っていることは相当に深刻な問題だと思っています。