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マンション標準管理規約の改正概要(1)

 マンション標準管理規約が改正されたことをお知らせしましたが、概要をもう少し詳しく見ていきたいと思います。
 大幅に追加修正された箇所は、ITを活用した総会や理事会についての記述箇所です。新型コロナウィルス感染拡大のなかでの総会や理事会の開催方法(WEB会議等)について、昨年の春ごろから管理組合様からのご相談が多々ありましたが、これ等の箇所は、それに幾分か対応した内容となっています。以下が、その箇所と内容です。
・ITを活用した総会や理事会の開催実施にあたって、まず「電磁的方法」と「WEB会議システム等」の定義を第2条で追加規定しています。
・理事長は総会で前年度の管理組合の業務執行内容を報告することになっていますが、リアル総会(会場に集合していただく従来の総会)以外にもITを利用した総会でも可能であることがコメントで記述されています。
・WEB会議システム等で総会を開催する際には、WEB会議システム等にアクセスするためのURLを通知し、組合員なりすまし防止のためのIDやPWを送付しておくのがよいとのコメントが、第43条に新しく記述されています。
・ITを活用した議決権行使の取扱いについては、管理規約に定めなくても、リアル総会での議決権行使と同様に有効であると、第46条にコメントされています。ただし、サイバー攻撃や大規模通信障害が発生した場合には総会の決議が無効となる恐れに留意しておくことが添えられています。
・総会の成立要件は議決権総数の半数以上を有している組合員の出席ですが、WEB会議システム等で出席した組合員も出席組合員に含まれると、第47条で新たにコメントされています。

 新型コロナウィルス感染が拡大し始めた昨年の春ごろから、WEB会議システム等のみでの総会や理事会の開催についてのご相談が、かなりありました。この時期は、総会を開催する管理組合様がとても多い時期でもあります。
 区分所有法には、理事会自体についての規定がありませんので、開催方法の規定もありませんから、理事会については、WEB会議システム等のみでの開催が可能であることを管理規約に規定することで可能です。しかし、総会(集会)については区分所有法で規定されており、リアル総会以外で開催する方法として、組合員の全員の合意があれば書面や電磁的方法で決議することができる旨が規定されています。ただし、「全員の合意」というハードルが非常に高く、現実的に可能な管理組合様は20戸前後以下の小規模な管理組合様に限られてしまいます。しかも、この規定は強行規定で、任意に管理規約に別途規定することはできません。以下が、その条文です。

(書面又は電磁的方法による決議)
第四十五条 この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。
2 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。
3 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。
4 第三十三条の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第一項及び第二項の電磁的方法が行われる場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。
5 集会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。

 この条文が改正されない限り、全員の合意を取り付けて書面又は電磁的方法で総会を開催することはほとんど不可能で、現状においてはWEB会議システム等のみでの総会の開催は無理と思われます。

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