マンション高圧一括受電サービスの実態調査 その3
今回が、経済産業省が調査委託した株式会社富士経済の「平成26年度電源立地推進調整等事業(マンション高圧一括受電サービスに係る実態調査)」の報告書内容の最後で、既存マンションでのサービス開始までの手続フローを、報告書そのままを以下のとおりお知らせします。
既存マンションは、物件の規模や借室電気室の有無、築年数などにより、高圧一括受電事業者における導入条件が、新築マンションのそれと大きく異なる。
さらに、既存マンションの場合は、居住者ごとの一般電気事業者との既存の電気契約が存在するため、その解約手続きが必要になるなど、サービス開始までの必要な手続に関しても、新築マンションのケースと大きく異なる。
①現地調査
既存マンションでは、高圧一括受電サービスの導入可否を検証するための現地調査を、一般電気事業者の協力の下で実施する工程から始まる。
現地調査の実施段階では、まだ高圧一括受電事業者は決定しておらず、管理会社や管理組合が選定した複数の候補事業者が、それぞれのサービス導入条件に照らしてサービス提供の可否を判断する。その結果、自社によるサービス導入が可能と判断されれば、電気料金の削減率などの盛り込んだ提案書を作成し、理事会に提案することになる。
②削減提案
高圧一括受電事業者が理事会に提案書を提出すると、理事会では基本的にはコンペティションによって各事業者を比較検討する。比較検討の際には、提案された電気料金の削減率だけでなく、事業者の経営情報(資本金など)や導入実績、導入条件、電力調達先、契約期間、サポート体制といった評価科目で事業者の評価を行う。最近は、コンプライアンスの問題もあり、コンペティションなしに理事会が事業者選定を行うことは少なく、原則として2社以上の事業者から選考している。なお、高圧一括受電事業者が数多く参入する関西地区の既存マンションの場合、10社程度の事業者から選考するケースもあるとされる。
最終的には総会決議で高圧一括受電サービスの導入可否や採用する高圧一括受電事業者が決定されることになるが、遅くても総会開催前の理事会の議案として、サービス導入時の事業者を選定しておく必要がある。
③住民説明会
総会開催前に、高圧一括受電事業者と理事会が共同で、高圧一括受電サービスの導入を周知するための住民説明会を開催する。住民説明会では、サービス導入による電気料金の削減効果やメリット・デメリットの説明、質疑応答などを行い、必要に応じて住民アンケートも実施する。
④総会決議
高圧一括受電サービスの導入に係る総会決議には、普通決議※1と特別決議※2がある。一般に高圧一括受電サービスの導入自体は普通決議による可否で問題はないが、マンション管理規約の変更を伴う場合は、区分所有法に基づく3/4以上の特別決議による可否が必要になる。具体的には、マンション管理規約に電気供給元として一般電気事業者の名称が記載されている場合は管理規約を変更する必要が生じるため、特別決議が必要になる。
※1 普通決議:区分所有法第39条第1項「集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の過半数で決する」
※2 特別決議:区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議
⑤契約締結
総会決議後、選定された高圧一括受電事業者が管理組合や居住者(区分所有者)と契約手続を行う。その契約手続きの際に、高圧一括受電事業者が各居住者に対して求める手続としては、各戸と一般電気事業者との電気契約の解約の手続(全戸同意)と、高圧一括受電事業者とのサービス利用契約の締結の手続(利用申込書の回収)の二つがある。
⑥サービス開始
全戸同意や利用申込書の回収が完了した段階で、高圧一括受電事業者が一般電気事業者に対し、受変電設備等の導入に係る工事申請を行う。
一般電気事業者への工事申請から、高圧一括受電事サービス提供までに要する期間は、工事申請先の一般電気事業者によっても異なるが、通常は4カ月程度となっている。