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大阪市が「特区民泊」住民説明会を義務化

 日本経済新聞によりますと、大阪市は、国家戦略特区法に基づく「特区民泊」を開業する前には、住民説明会を開催することを事業者に義務付ける方針を固め、2月の大阪市議会に条例改正案を提出し、4月からの施行を予定しているようです。国の政令で、周辺住民への適切な説明が開業事業者の認定要件となっているのですが、大阪市の条例ガイドラインにおいては、住民説明会の代わりに戸別訪問による説明も認めており、不在の場合は資料のポスティングも可能としています。事業者は特区民泊申請時には住民説明会や戸別訪問の記録を提出しなければならないところ、説明会の議事録や戸別訪問の記録を偽造しており、「民泊をやるなんて聞いていない」「民泊を始めると書いたチラシがポストに入っていただけ」などの苦情が保健所に相次いで寄せられているとのことです。また、住民が参加しにくい開催時間や遠出しなければならない場所を設定したりする悪質なケースもあるようです。昨年度の集計はわかりませんが、2018年度の苦情361件中55件が事前の住民説明に関するものです。ちなみに、一番多かったのはやはりゴミや騒音に関する件のようでした。
 特区民泊を導入している自治体は全国で8か所ですが、認定居室数は圧倒的に大阪市が一番多く10,437室(大阪府全体では10,478室)で全国の約9割以上です。2番目に多い東京都大田区が614室ですので、どれだけ大阪市が多いかが分かります。ちなみにその他はわずか4室で、北九州市が2室、千葉市と新潟市がそれぞれ1室です。この数字は昨年11月末時点のものです。2025年には国際博覧会が開かれ、IRの誘致を積極的に行っている大阪では、ますますインバウンドの増加が見込まれるため、民泊事業への投資が収まる気配がありません。
 たとえば、パナソニックホームズ(大阪府豊中市)は、特区民泊において同社初となる『BON Condo NambaNipponbashi(ボンコンドナンバニッポンバシ)』を2019年12月11日にオープンしました。パナソニックホームズが土地・建物をオーナーから一括借上げをして、REAH Technologies(通称:リアテク)に転貸するもので、リアテクが開業に至るまでの市場調査および事業性検証、施設コンセプトワークなどを行い、開業後は集客・運営管理を一括して行います。大阪メトロ千日前線と堺筋線の「日本橋」駅、近鉄線「近鉄日本橋」駅から徒歩2分ほどの場所で、道頓堀や黒門市場に近い立地です。10階建ての全54室(約40m2)で、1室最大5人まで宿泊できるということです。また、民泊を中心とした不動産インターネット事業を提供する株式会社スペースエージェント(本社:東京都渋谷区)と、不動産管理・仲介・開発など不動産に関する事業を幅広く提供する株式会社宅都ホールディングス(本社:大阪府)は業務提携を行い、大阪の物件19棟を民泊投資物件として提供開始することが、1月15日にリリースされています。    BON Condo NambaNipponbashi

 一方、2018年の6月から開始となった住宅宿泊事業法による民泊の方ですが、2019年3月の時点で14,059件の届け出となっています。住宅宿泊事業法が施行されたあとは、民泊事業者のHP掲載物件の数が大きく減少し、特に大手民泊事業Airbnbが違法な物件の掲載を取りやめにしたため、一時的にAirbnbの物件数が大きく減りました。民泊事業者は法令遵守を徹底していて、健全な民泊の普及に努めているのですが、やはり違法な民泊物件はまだまだ存在しているようです。
 分譲マンションでは、ほとんどの管理組合が住宅宿泊事業法施行(2018年6月)の前後に、管理規約の見直しを行い民泊禁止の是非を規定しましたので、最近、民泊禁止のマンションで民泊が違法に行われていることを耳にしませんが、以前、大阪市中央区のファミリーマンション(15階建て約100戸)で違法民泊が行われ、そのマンションの管理組合が、民泊行為の停止と約3267万円の損害賠償の支払いを求めて大阪地裁に提訴したことがありました。
 このマンションの区分所有者となった男性が、民泊の仲介業者などを通じて民泊ゲストを募集し、2014年11月ごろから2016年8月ごろの計約1年10カ月間に渡って、外国人観光客などを1泊1万5000円ほどで民泊させていたという事案です。提訴したのは2016年1月で約4年経っていますが、やっと一部和解が成立するとのことです。残りの係争中の案件は中国在住の区分所有者と住戸の占有者とされる法人のようですが、相手側は法人の占有者を否認しており、あくまで区分所有者が賃貸している中国の会社が社宅として使用しており民泊ではないと主張しています。
 3年ほど前に、中国人投資家数名が買い取った賃貸マンション2棟(黒門市場付近)を民泊できる分譲マンションにしてほしいと頼まれた香港の不動産会社から、当事務所に管理組合の設立と管理規約の制定の依頼のメールがありました。まだ住宅宿泊事業法が施行される一年ほど前のことです。また、直近では、中国人投資家向けの分譲マンションを建設するので、民泊ができる管理規約を作成してほしいとの依頼が日本の建設会社からありました。たぶん、中国人にしか分譲しませんので、区分所有者は誰も居住していないマンションとなる予定で、今後も数棟建設するそうです。管理会社をどうするのか?総会の開催をどうするのか?合法に運営しようとすれば様々な課題をクリアーしないといけないと思われるのですが、このような中国人投資家向けのマンション建設は、今後も増え続けそうです。
 上記の提訴したマンションの管理規約ですが、民泊禁止に関する規定は、国土交通省が発表した民泊に関するマンション標準管理規約例が発表される前に独自に考えられたもので、「違約金」に関しても規定しています。すでに民泊禁止の規定に改正された管理組合様でも一部参考になると思いますので、その規定を記載させていただきます。

第12条(専有部分の用途)
1 区分所有者は、その専有部分を専ら組合に届けた用途として使用するものとし、他の用途に供してはならない。ただし、専有部分の用途に関して共同の利益に反してはならない。また、①~④の理由をもって第2項以下の利用を禁止する
① 防犯面(セキュリティー)の低下
② 共用部分等の汚損または破損の増加
③ 共同住宅としての資産価値の低下
④ 静謐な住環境の乱れ
2 区分所有者は専有部分を1カ月未満の契約により賃貸(いわゆるウィークリーマンション)してはならない
3 各区分所有者および占有者は本件マンションの専有部分、共用部分および敷地を不特定の第三者に名目を問わず、宿泊や滞在場所として提供(以下「民泊」という)をしてはならない
4 前項の不特定の第三者とは、区分所有者、区分所有者の親族、区分所有者からの賃借人、賃借人の親族(以下合わせて「縁故者」という)を除き、かつ縁故者以外の者(いずれの縁故者も常時かつ明確に住所、氏名および職業(就業、就学先を含む)を把握していない者)をいう。また、社宅として利用する場合は、社員であることをその都度、証明しなければならない
5 本条第2項、第3項、第4項の規定に反し、各区分所有者および占有者が民泊させ、または宿泊場所等として提供することの宣伝や民泊を斡旋する業者等への登録等を行った場合、管理組合は、当該区分所有者および占有者に対して、民泊をさせて日、または宿泊場所等として提供することの宣伝や民泊を斡旋する業者等への登録をした日から、民泊を行わないことが確認できた日まで、一日当たり5万円を違約金として請求することができる
(6、7,8、9略)
10 管理組合は、専有部分が民泊に供されていると認めた時は、当該専有部分の区分所有者および占有者に対して、その中止を求めるためのあらゆる法的措置を講じることができる。また、法的措置を講じた場合、その者に対して、違約金として弁護士費用等その他の法的措置を講じるために生じる一切の費用について実費相当額を請求することができる

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