日本マンション管理士会連合会の提言
国土交通省の通知を受けて、4月25日に関係団体による「マンション計画修繕における適正取引推進協議会」(座長はNPO全国マンション管理組合連合会の川上会長)が発足しました。私が所属している(社)大阪府マンション管理士会が会員でもある(社)日本マンション管理会連合会の親泊会長が、この協議会宛に提言をしましたので、お知らせします。
***** マンション計画修繕における適正取引推進協議会への提言 *****
1.マンションの大規模修繕工事等の施工者となり得る会社は、管理組合の与り知らぬところで設計事務所その他の周辺業者に対し、バックマージン等の不透明な金銭を支払わないことを宣言すべきである。実際にも、そうした金銭が支払われなくなることだけで全面的に解決する問題である。なお、当連合会は、新築工事の事業に伴う業界慣習等には一切干渉しない。
2.大規模修繕工事の監理者は、施工における発注者(管理組合)側の代理人と位置付けられるほか、問題になっているバックマージンは、当然に発注者が負担する工事代金に転嫁される関係にあり、不適切なコンサル行為は利益相反以外の何物でもない。設計監理者となる者は、この関係を改めて認識すべきである。
3.管理組合の大規模修繕工事の事業運営においては、「設計・監理」「施工」といった高い専門性が求められる業務をすべて外注せざるを得ない中、最も多額の費用を支払うことになる工事発注会社の選定の検討、内定については本来、発注者となる管理組合(理事会や専門委員会)が主体となって行うべき唯一の業務に当たると考えられる。にもかかわらず、この業務に対するコンサルティングをも、工事について当事者性を帯びた立場にある設計監理者に依存してしまうことに起因して今回のような問題が生じていると言える。
4.大規模修繕工事等の工事発注会社選定のコンサルティングは、「設計・監理」にも「施工」にも携わらない立場にあり、かつ、法律上の責任を負って管理組合に対する助言、指導等を行うマンション管理士に担わせることが望ましい。当連合会では、当該コンサルティングに耐え得る会員会所属マンション管理士を育成するべく、研修の充実に努めるほか、第1回会議で多くの関係者から意見があった「プロセスや基準の構築」のために、先行事例やアイデアを提供する用意がある。
5.管理組合の大規模修繕工事等の事業運営を通じて、管理組合の与り知らぬところで工事会社に対して不適切な金品等を要求する者がある場合や、実際にも金品等を受領する者があった場合などには、その者の名称・氏名を公表されたい。万一それが当連合会の会員会所属マンション管理士である場合、当連合会の倫理規程(当該行為の禁止)に基づき、内容に応じた指導、排除を考慮する。
6.マンションの大規模修繕工事の設計監理業務を受託し得る専門会社を構成員とする任意団体の設立、倫理規程(行動規範)の制定と構成員に対する遵守の義務付け、反した者の排除等の仕組みの構築が待たれる問題と考えることもできる。
7.管理を委託している場合、管理会社(グループ会社を含む)が大規模修繕工事の元請受注しか眼中にない(しかしそれを管理組合に対してストレートにも言い出せない)ことに端を発し、適切なアドバイスを行う機会を逸していることに起因して、本問題が生じることになっているとも考えられる。某週刊誌で「叩かれ側」になってしまった管理会社は、本問題を契機として、受託先マンション(管理組合)に対する大規模修繕工事の実施方式の利害得失等に関するアドバイスを自社がきちんと行っているのかどうか(受託先との信頼関係)の再確認が求められると考えられる。