民泊サービス会社が、新法への対応準備を始める
「シェアリング・エコノミー」と呼ばれるサービスが、欧米を中心に広がりを見せていますが、「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスで、対象となる所有物は空き室から車、ペットまで多岐に渡ります。そして、そのなかで空き家や空き室を対象として旅行者に有料で貸し出すサービスが、いわゆる「民泊」です。現状では、この「民泊」を提供するためには、旅館業法の要件を満たしているか、または国家戦略特区で認定を受けるしかありません。そのため、政府は住宅宿泊事業法案(民泊新法)の成立をめざしています。
昨年、東京都大田区、大阪府、大阪市、北九州市で始まった国家戦略特区の民泊申請の現況ですが、東京都大田区が31件108室と最も多く、そのうち分譲マンションは7件38室で、そのほとんどが投資型マンションのようです。投資型ではないですが、京王電鉄が今月の21日に、民泊向けマンション「カリオ カマタ」を報道陣に公開しており、民泊が営業できる認定を受けました。東京のJR蒲田駅から徒歩10分にあり、2DKのメゾネットタイプでシステムキッチンのほか冷蔵庫や洗濯機も備えられているようです。国家戦略特区のひとつである大阪市では27件59室が認定されていますが、大阪市よりも半年ほど早く申請受付をした大阪府の方はたったの4件6室だそうです。観光客の多くは大阪市内に宿泊を希望しており、市外の大阪府下での宿泊需要が高くないからだと考えられています。ちなみに、分譲マンションでの申請すら無いようです。
一方民泊大手の米エアービアンドビーを利用した訪日客は、2016年には約370万人に達したようで、その数は、日本政府観光局が発表した2016年の訪日客約2400万人の約15%という多さです。そのエアービアンドビーは、民泊新法を見据えて、新たな規制や部屋の貸し手に求められる要件に対応できるように準備を始めました。1つは、民泊新法で制限される年間営業日数の制限に対して、貸出日数を自動的に管理し、上限を超えた物件は仲介サイトで借り手が見られないようにするシステム機能の構築です。また、宿泊税の回収や納付を代行するシステムも検討中で、貸し手の自治体への民泊申請の手助けもできる機能も考案中のようです。
中国の民泊大手である途家(トゥージア)も、昨年4月に全額出資の日本法人を設立し、今年の民泊新法成立を見据えて準備しており、訪日中国人旅行者が宿泊できる物件の増加への活動を強化して、2020年東京五輪までに登録数5000軒を目指しているようです。また4月には、カスタマーセンターを設置するとのことです。
訪日客を中心に、グレーな民泊も含めて「民泊」の利用が広がっているにもかかわらず、なかなか法整備が進められていないのが現状で、それにしびれを切らした民泊関連企業が、先回りして民泊新法への対応策を模索しているようです。しかし、旅館業界が難色をしめしている年間営業日数を、各社がエアービアンドビーのように独自で管理するシステムを構築したとしても、全ての民泊サービス会社を通じて貸し出した総日数が規制されなければ意味がありませんので、民泊サービス業界自体で管理できるシステムの構築が急務であると思われます。