福岡市の傾斜マンション問題 企業トップがやっと謝罪
このトピックスで何度も紹介しました福岡市東区の「ベルヴィ香椎六番館」(1995年7月築、鉄筋コンクリート造7階建て、60戸)の傾斜問題で、動きがありましたのでお知らせします。
このマンションを販売したJR九州、若築建設、福岡綜合開発(現・福岡商事)の三社のトップが21日にマンションを訪れて、やっと住民側に謝罪しました。
この傾斜問題を主な時系列をおさらいしますと、次のとおりです。
<1995年>
・7月に分譲(間取り3~4LDK、価格2000万~3000万円)
<1997年頃>
・築1,2年で外壁のひび割れ、玄関ドアが開かないなどの不具合が続出
・そのうち5戸が玄関ドアの取替対応が行われる。(しかし約20年後、玄関ドアを交換した5戸のうち2戸のドアが再び開閉困難となる。)
<2016年>
・測量会社社員の住民が測量調査を行う。
・結果は、同じ階で最大104mmの高低差があることが示され、マンションは10cm以上も傾いていた。(販売会社側も調査したが、結果は同じであった。)
<同2017年>
・住民側は、自ら約200万円かけ、専門の業者によるボーリング調査を独自に実施する。結果、杭が支持層に届いていなかった。
・その結果を受け、販売会社側も杭の調査を実施
・販売会社側は、杭の調査では支持層まで届いているので傾斜の原因が杭と断定することは難しいと主張
・住民側と施工会社側の主張は平行線のまま
<2018年>
・管理組合側は裁判所に調停を申請するが、裁判所は調停案を出さないまま不成立に終わる。
<2020年>
・1月に、住民側はさらに500万円かけて日本建築検査研究所(東京)にボーリング調査を依頼
・3月~4月にボーリング調査が実施される。
・結果、マンションの傾きが大きい付近の2本の基礎くいは、固い地盤にそれぞれ7・3メートルと4・1メートル長さが足りなかった。
・4月22日に「調査結果の報告について」という文書が住民に配布される。
・5月8日に販売会社側のJR九州、若築建設、福岡商事の幹部が謝罪する。
・5月29日に上記三社のトップがやっと謝罪
大まかな、時系列は以上ですが、販売会社は今年に入るまでは、責任逃れの発言をし続けていました。入居後まもなく相次いだヒビ割れに対しては、その箇所を補修した上で、「主要構造部分への影響はないことを確約します。皆様の心配されているような、建物倒壊には決してつながりませんので、御安心下さいますようお願い申し上げます」との確約書を管理組合に提出しています。
また、2016年の測量調査結果では、最大高低差104mmの傾斜や多数のクラック、玄関ドア三方枠の歪みは認めていますが、杭の調査では支持層まで届いているので傾斜の原因が杭と断定することは難しいと主張したり、地震などの外的要因が影響を及ぼした可能性が否定できないため、今後、傾斜の原因についての調査は行わないと回答しており、住民側の追及をノラリクラリとかわしています。
一方、住民側が頼りにして調査要請した福岡市も、販売会社側から施工当時の資料が残っていないと回答されたことを理由に、「これ以上、市として不具合を調査することはできない」と通知しており、監督機能を果たしていませんでした。
しかし、21日の販売会社側のトップが謝罪したことで、福岡市は改めて確認せざるを得ない状況になっています。建築基準法では、市は建築物を調査する権限を持っており、法令違反があった場合には是正勧告などの行政指導ができることになっていますので、速やかに対応してもらいたいと思いますが、福岡市の担当者はこの期に及んでも、「現段階では法に基づく措置ではなく、まずは経緯を確認したい」と言っているようです。
最後に、JR九州の青柳俊彦社長は21日の記者会見で、杭は届いているとの報告を受けていたとし、「適切な対応だったとは結果としては言えない」と述べています。あくまでネットニュースでの情報ですので、この言葉が本当かどうかは分かりませんが、もし本当であれば、この言葉は「不具合が明らかになってしまった結果なので我々の対応が不適切であった」、「何とか騙し通すことができなかったので結果として我々の対応は正しくなかった」と聞こえてしまいます。この言葉を裏返せば、「不具合が明らかにされなければ我々の対応は適切であった」、「何とか騙しと通すことができたら我々の対応は正しかった」と言っているようなものとしてか受け取れないのは私だけでしょうか。
従来よりも多くの大手報道機関がJR九州の企業名を出して今回の謝罪記事を報道しており、また手抜き工事と思える新事実も出てきていますので、世論が住民側の味方になるのは確実で、JR九州が企業倫理を問われることになるのは必定でしょう。