管理費と自治会費との区分経理
最近、管理組合の理事会で自治会の加入是非について検討される場面に遭遇します。
自治会の加入是非についての考え方は、マンションによって様々で、あるマンションでは、加入のメリットを感じられなくなったために、マンションごと自治会から脱退することを検討しています。実際に脱退したマンションがあります。反対に、現在自治会に加入していない、又はマンション内に自治会組織がないため災害などの非常時には不安であるから、マンション内に自治会組織を新たに作ることを検討しているマンションもあります。
そこで、「管理組合」と「自治会」との違いを少し整理してみたいと思います。
まず初めに、「管理組会」とは区分所有者で構成された団体で、その目的は建物並びにその敷地及び附属施設を維持管理することで、マンションという共有財産を管理するだけの管理団体です。そして、区分所有者であれば自動的(強制的)に加入することになり、組合への加入,脱退などの手続は必要なく、一種の強制加入団体であり,個々人の意思で脱退することはできません。
次に「自治会」とは、町村等の一定区域に居住する住民で形成される団体で、その目的は地域の住民同士の親睦を図って地域生活の向上をめざすことにあります。町会や町内会と同様の組織です。自治会は希望する人が入れる任意加入の団体で、管理組合のように加入・脱退が自動的に行われるわけではありません。
そして、分譲マンションと自治会との関係は様々ですが、大きくは次の2つのタイプに分かれます。
①マンションで1つの班を構成して、周辺の自治会や町内会に属する。
②マンションの居住者のみで1つの自治会を構成する。
200戸以下の規模の小さいマンションではほとんどが①のタイプで、300戸前後以上の比較的大きなマンションでは②のタイプで独自に自治会を組織しているところが多いです。
特に②のタイプのマンションでは、管理組合と自治会を混同しておられる住民の方が多くみられます。
その1つの要因は、マンション分譲時に設定された管理規約において、自治会や町内会に加入することが義務付けられていたことです。例えば、次のように規定されています。
「区分所有者は対象物件地元の〇〇○自治会に加入するものとし、管理組合が管理費の中から所定の町会費を負担すること。」
又は、「本マンション居住者(区分所有者および占有者)は●●●自治会へ加入し、自治会活動へ協力するとともに、自治会費等を負担しなければならない」
後者の規定でしたら、まだ管理組合と自治会との区別が見受けられますが、前者の規定ですと、管理組合=自治会と受け取られても仕方がありません。そして、前者の規定で一番問題なのは、自治会費を管理費から支出していることです。前述しましたように、管理組合と自治会の構成員は一緒ではありません。賃借人の方は、管理組合に加入できませんが自治会には加入することができます。前者の規定の場合、賃借人の方が自治会に加入されているのでしたら、賃貸人である区分所有者が徴取された管理費から賃借人の代わりに自治会費を肩代わりしていると考えられますが、もし賃借人が加入していなかった場合には、その賃貸人の区分所有者は、自治会に加入していないにもかかわらず、徴収された管理費から自治会費を支払っていることになります。区分所有者の加入有無別に自治会費を徴収していれば問題はありませんが、おそらくされていないように思われます。
管理費と自治会費を分けて徴収すれば、自治会の加入者のみに自治会費を徴収しますので、こんな事が起らないのですが、これにもある事情があります。自治会費を、自治会担当の役員となった方が一軒一軒訪ねて回り自治会費を集金するとなると、世帯数が多いマンションでは大変な作業になってしまいますので、便宜上、都合が良いという理由で管理費と併せて徴収しているのです。実際、私が管理組合運営のお手伝いさせて頂いているマンションでも、自治会担当の役員となられた方が一軒一軒訪ねて回り自治会費を集金していましたが、このマンションでも高齢化がすすんでしまって、この集金作業がかなりの重労働となってしまいました。そこで、集金を止めて、自治会費を管理費とともに口座振替で徴収することに変更となりました。賃借人の自治会費については、賃貸人の区分所有者から管理費とともに口座振替で徴収させてもらい、賃貸人の区分所有者には、立て替えた自治会費を賃借料とともに賃借人に請求してもらうこととしました。賃借人の口座から徴取することも可能ですが、徴収する自治会費よりも手数料の方が高くなってしまいますので、賃貸人の区分所有者に立て替えてもらうことになりました。ただし、区分経理は絶対に行わなければなりません。
マンション標準管理規約のコメントには次のように記述されています。
<第27条関係>
自治会費又は町内会費等を管理費等と一体で徴収している場合には、以下の点に留意すべきである。
ア 自治会又は町内会等への加入を強制するものとならないようにすること。
イ 自治会又は町内会等への加入を希望しない者から自治会費又は町内会費等の徴収を行わないこと。
ウ 自治会費又は町内会費等を管理費とは区分経理すること。
エ 管理組合による自治会費又は町内会費等の代行徴取に係る負担について整理すること。
つまり、徴収の方法にかかわらず、未加入者から自治会費等を徴収せず、トラブルが無いように「管理費」と「自治会費」との区分経理を行って、自治会費等の収支を住民の皆様に明確にすることが重要であるということですので、区分経理をせずに自治会費を管理費とともに徴収されておられる管理組合様は、是非、是正していただければと思います。