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軍艦島調査研究と分譲マンションの長寿命化


 今月、軍艦島に行ってきました。我が国初めての鉄筋コンクリート造共同住宅である30号棟が朽ちてしまわないうちに、それとも私の体が朽ちるまでに、必ず行きたいと思っていた願いがやっとかないました。
 30号棟は1916年に建てられましたので、今年で築105年です。端島炭鉱が閉鎖され全ての住民が軍艦島から退去したのが1974年ですので、それからでも47年経っています。無人島になってからはメンテナンスが行われておらず老朽化が進行しています。
 上の写真は今回撮ったものですが、右上の外壁部分がありません。昨年(2020年)の3月に、30号棟の一部が突然崩落するまでは外壁はありました。その後も崩落は拡大して、6月には新たな箇所でも崩落しています。今後も崩落し続けていきます。もし私がまた訪れたときには、この写真よりもさらに崩落した状況になっていることだと思います。そのためにも、早く軍艦島に行きたかったのです。ちなみに、世界で最初の鉄筋コンクリート造の集合住宅は、コンクリートの父と呼ばれるオーギュスト・ペレが設計した、フランスのパリに1903年に完成した「フランクリン通りの集合住宅」と言われています。

 この30号棟は7階(当初は4階)建てで、6畳1間(18㎡程度)の約140戸です。ロの字型で中央内部は吹き抜けになっており、吹き抜けの空間を回るように階段が設置されています。吹き抜け部分には天井がありませんので、雨が降ると雨水が階段を伝わって階下に降り注いだとのことです。トイレは共同トイレで各階の西側の角にあり、落とし便所ですから、排泄物は外壁に取付けられた配管を通じて海にそのまま流していたようで、またゴミはダスターシュートで下に集められリヤカーで焼却炉に運び処理されていたみたいです。
 一般人は、指定された場所から遠くからしか見学できず、当然建物の中を覗くことはできませんが、テレビ、洗濯機、新聞などの生活用品がそのまま残されたままとのことです。
 築100年以上経ち崩壊寸前の30号棟が、今の状態で残されていることは、奇跡に近いと言われています。無人島だから出来ていることで、都市部にあったとしたら、すぐにでも取壊しされているはずです。ですから、鉄筋コンクリートに関わる研究者にとっては、この劣化状態で残っていることに感謝し、様々な方法で調査研究をされています。
 たとえば、東京大学大学院の野口教授を含む研究グループは、常時電流を流すことで、コンクリートが高濃度の塩分を含んでいても、鉄筋の酸化や腐食を食い止められる方法を模索しています。
 また、芝浦工業大学の濱崎准教授は、防錆材「亜硝酸リチウム」で鉄筋の腐食を治療できるのではないかと研究しており、論文「亜硝酸リチウム含浸による経年構造物の補修工法に関する屋外暴露試験」を発表しています。興味のある方は、こちらをご覧ください。

 論文「亜硝酸リチウム含浸による経年構造物の補修工法に関する屋外暴露試験」 

 研究者だけではなく、三井住友建設(東京都)や山陽工業(広島県)などの企業も大学とともに調査・研究を行っています。
 長い年月をかけて劣化した軍艦島の鉄筋コンクリート造の建物群は、研究者や建物に携わる関連者にとっては、とても貴重な研究材料となっており、これらの研究成果が、一般建築物は勿論ですが、分譲マンションの長寿命化に必ず役立つものと思います。

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